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【テニスギア講座】「打球感がいい」ってどういうこと?それを決めるのはラケットだけじゃない!<SMASH>

松尾高司

2022.02.11

かつて往年の名選手、マッケンローは「柔らかい打球感は繊細なタッチを可能にし、ヒジや腕にも優しい」と、カーボンでも柔らかいモデルを愛用した。(C)Getty Images

かつて往年の名選手、マッケンローは「柔らかい打球感は繊細なタッチを可能にし、ヒジや腕にも優しい」と、カーボンでも柔らかいモデルを愛用した。(C)Getty Images

 ラケットの「打球感がいい・悪い」とは、どういうことを示すのでしょう? 実はこれ、日本と海外では評価のされ方がまるで違います。

 日本人は「マイルド」「柔らかさ」「ホールド感」のあるラケットを打球感がいいと表現します。しかし欧米人は「球離れの早さ」「スッキリした打感」を、いいとはっきり言うのです。

 それは、日本人と欧米人の体力や感性の差に起因するのではないかと思います。日本人は微妙なフィーリングや優しさを大事にする人種であり、道具に対しても、使い勝手の良さとか、緻密なさじ加減などを求めます。

 対して欧米、特にアメリカではパワーや強さが大きな評価基準になります。ラケットに対しても、はっきりとした結果を出してくれるものが好きで、パワフルに弾く感覚を求め、「スッキリ」して「張りのある」打球感をグッドフィーリングと評価するわけです。

 では日本人が好む「マイルドな打球感」は、どのように作り出されるのでしょう。カーボン繊維の品質や加工技術が進化し、軽量化が進むと、ラケットは打球衝撃が伝わりやすくなりました。すると腕への負担を減らすため、衝撃や振動への対策も進歩します。

 ただ、そもそも打球に関わる道具的要素は「ラケットフレーム」と「ストリング(ガット)」の2つがあり、その融合バランスが結果を決めるので、一概に「あのラケットは打球感がいい」とは言えません。例えば打球感がマイルドなフレームに、硬いポリエステル系ストリングを張ったら、全体としてマイルドな感触ではなくなります。あくまで2つの組み合わせが重要だということを知っておいてください。
 
 それを踏まえた上で、「打球感がいい」と言われるラケットフレームはどんなものか? それはフレームの構成素材として、カーボン以外に打球感をマイルドにしてくれる素材をコンポジットしているとか、グリップ内部に衝撃緩和システムを組み込むなどの振動対策が取られている場合です。

 一方、ストリングは主に素材が大切で、シンセティックではポリアミド(ナイロン)を主とし、構造的にはマルチフィラメントがマイルドでホールド感があるとされています。そしてモノフィラメントは、もう少し張りのある感覚で、「飛び感がいい」「瞬発感がある」となり、ポリエステル系はこの2つから大きく離れて「硬い打球感」「高速インパクトで爆発的パワーを発揮する」とされています。

 同じ素材でもモデルごとに違いがあるので、自分に合う組み合わせを知るには、ラケットの専門家であるストリンガーにアドバイスをもらいながら、実際に張って試してみるしかありません。広い視野で「自分にとってのベストラケット」を作り上げるように考えてください。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2020年4月号より抜粋・再編集

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