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ルーティンを持てば精神が安定する。スポーツ心理学の権威博士が独自解説!「脳は達成可能な目標指向を非常に好む」【Part3】<SMASH>

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2022.05.08

ナダルは多くのルーティンを持つことで知られ、ボトルのラベルはいつも同じ方向に向けている。(C)Getty Images

ナダルは多くのルーティンを持つことで知られ、ボトルのラベルはいつも同じ方向に向けている。(C)Getty Images

 最近、スポーツメンタルについての話題が多く持ち上がっている。テニス雑誌『スマッシュ』では2012年に、スポーツ心理学の権威、ジム・レーヤー博士に話を聞いている。その内容を紹介しよう。3回目はメンタル面で一般プレーヤーがトップ選手から学べることについて。

――◆――◆――

 トップ選手のプレーや戦術をマネしている人は多いと思うが、メンタル面はどうだろうか。レーヤー氏に、マネできる点について聞いた。

「試合ではポイント間をよく見てください。トップ選手はどのように歩いていますか? 彼らの頭や肩はどうなっていますか? ミスをした後、彼らはどうしていますか? 彼らはセットを落とした後でも失望感を顔に表すことはありません。

 一方、一般プレーヤーは肩を落として失望感を表してしまいます。もしあなたが試合で自分のベストパフォーマンスを出したいと思うなら、怒りや恐れ、フラストレーション、プレッシャーにどう対応するべきかという点から学び始めましょう」

 多くの選手が行なっているルーティンだが、メンタルにどれほど良い影響があるのだろうか。

「ルーティンはメンタルをコントロールする要素です。プレーの前、食事、水分補給、ポイント間、どうラケットを持つか、サービスモーションに入るまで、色々なことを習慣づけることができます。ルーティンを持つことで精神を安静にさせることができ、この習慣に集中することが良いプレーをするための集中に必要なのです。

 脳は良い働きをしている時は、とても穏やかな状態にあります。私が若い選手を教える時は、試合前、試合中、試合後に行なうルーティンを作り、そのルーティンを必ず実行するように指導しています。そして、大きな大会に出場する時もそのルーティンを守らせています」
 
 ルーティンの中でも勝敗に最も直結しそうな試合前のルーティンは、どのようなことをしておけばよいのだろうか。

「誰と試合をするのかを理解し、どのように試合を組み立てていくのかなど、試合前に全てを明確にしておく必要があります。どのようなパフォーマンスを出したいか、どうストレスをコントロールするかなど、全てです。それらはあなたが試合前に設定する目標の一部分となります。覚えておいてください。脳は達成可能な目標指向を非常に好むのです。

 あなたは勝敗をコントロールすることはできませんが、ミスにどう対処するか、怒りをどう納めるか、どんな言葉を発するかなど、コントロールできる要素も多くあります。コントロールできることに対して自分の行動をどうするべきかを学べば、セルフコントロールができるようになり、メンタルタフネスの部分で成功を収めることができるでしょう」

 メンタルは技術と同様に強くしていくものというのがレーヤー氏の持論。プロの試合ではポイント間にも注目してみてほしい。そして、自分のルーティンを作り、どんな大会に臨む時でもいつも通りの自分でいられるメンタルを手に入れよう。

解説者●ジム・レーヤー(Jim Loehr)
M・ナブラチロワなどトップアスリートのメンタル指導を行ない、1987年に「メンタル・タフネス」を発刊。現在は自身が共同創設者であるJohnson & Johnson Human Performance Institute, Inc.で一流企業のエグゼクティブに向けてメンタル指導を行なっている。 

取材●赤松恵珠子(スマッシュ編集部)、コーディネーター●石井秀樹
※スマッシュ2012年8月号から抜粋・再編集

【PHOTO】なかなか見られないトッププロの練習やテニス教室の様子

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