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海外テニス

新体制のチームを築き「勝利を求めすぎた」ダニエル太郎が、全仏OP1回戦で「すっごい苦しい負け」<SMASH>

内田暁

2022.05.23

ワイルドカードで出場の地元選手にフルセットで敗れたダニエル太郎。(C)Getty Images

ワイルドカードで出場の地元選手にフルセットで敗れたダニエル太郎。(C)Getty Images

 フランス語の大合唱がスタンドを揺らし、ウェーブが超満員の客席にうねりを生む。

 会場の西端に位置する、すり鉢状の14番コートは、観客の声援が呼応するように響き、熱狂の空間を生み出す。フィリップシャトリエなどのスタジアムとは異なり、一般チケットで見られるのもファンにとっては魅力のコート。歓声がさらなるファンを引き込むように、試合が進むにつれ客席の上段には、人垣が幾重にも連なっていた。

 ダニエル太郎が第4セットを失い、ファイナルセットに突入すると、その歓声は一層威力を増す。

「こんな雰囲気、デ杯でも感じたことがない」。後にダニエルは、述懐する。その「オーラ」の中で戦うのは、「正直、難しい」とも。

 全仏オープン初戦でダニエルが対戦したのは、ワイルドカード出場のグレゴワール・バレール。現在のランキングは209位だが、2年半前には80位に達している。両者の過去の対戦は1度。2020年のUSオープン初戦で、ダニエルは敗れていた。

 相手が、低い打点での打ち合いを得手とすることを知るダニエルは、弾むボールを使いながら、相手に心地よくプレーさせないことを心掛けた。
 
 6-0で奪った第3セットを筆頭に、その策は多くの局面で成功する。ただ第4セットでは、突如として相手が適応しはじめた。特にダニエルのセカンドサーブを、高い打点で叩き込む。大声援に背を押されるように、サーブ&ボレーも試みるようになりはじめた。

 第4セットを落とした時、ファンと一体化したバレール優勢の流れは、止めがたいまでに勢いを増す。ダニエルは、試合中盤まで主導権を握りながらも、6-3、2-6、6-0、3-6、4-6の逆転負けを喫した。

「今日は久しぶりに、すっごい苦しい負けだと感じています」。試合後の会見で、開口一番、ダニエルは言う。 

「相手もすごい良いプレーをしたけれど、最終的には自分が勝利を求めすぎて、その感情に揺さぶられた。特に第5セットは、それでボールが浅くなったと感じたので」

 ダニエルが敗因と目する、強すぎた勝利への渇望。その想いは、今季の好調に根差していたという。
 
「やっぱり今年、けっこう良い結果を残したので。ここでも、こういうチャンスを逃したくないという気持ちが強かったというのが、自分の印象です」

 もちろん相手も良いプレーをしていたし、おめでとうという気持ちを忘れてはいけないかなと思います――自分に言い聞かせるように、彼はそう加えた。
 
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