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【テニスギア講座】シューズに使われている素材は何? 一昔前とは様変わりした適材適所の先端技術<SMASH>

松尾高司

2022.05.28

プロの強烈なフットワークを支えるテニスシューズには、様々な機能が高いレベルで必要とされる。素材的にも高性能なものを組み合わせて使用する。写真:THE DIGEST写真部

プロの強烈なフットワークを支えるテニスシューズには、様々な機能が高いレベルで必要とされる。素材的にも高性能なものを組み合わせて使用する。写真:THE DIGEST写真部

 今回はテニスシューズの素材についてお話しします。1980年代以降のシューズは、主に3つの部位から構成されています。

1=アッパー 2=ミッドソール 3=アウターソール

 アッパーはシューズの上部。足を包む甲被のことで、80年代末までは各ブランドの最高機種は天然皮革製でした。ところが、それまで「疑似皮革」扱いされていた人工皮革の製造技術が急激に進化し、人工皮革による下克上が実現します。

 以降、30年近く人工皮革製シューズの天下が続きましたが、2010年頃から、メッシュと樹脂を組み合わせた「RPU」が主流となり始めます。縫い目が少なく、生産性が高いRPU製アッパーは、デザイン的にも個性を演出しやすいため、今後もシューズ界に君臨するでしょう。

 アッパーの下にあるのが靴底となるソールですが、現代では2つに分けて「ミッドソール」と「アウターソール」で構成されます。50年前は、ソールはゴム製の一体型でしたが、重さが難点でした。それを軽くしてくれたのがPUですが、今度は裏底の減りが早い。そこで、軽いミッドソールと耐久性のあるアウターソールとに役割分担したわけです。

 ミッドソールは主にクッション担当で、強い踏み込みにもカカトに衝撃を感じないようにしてくれます。今日では大半が「EVA」という発泡素材を使用。クッション性が高く、形状安定性や耐久性も備えている上、軽いのが特徴です。
 
 でもミッドソールにクッションが必要といっても、フワフワしすぎては危険です。そのため全体はやや硬めに作り、衝撃が集中する部分にだけクッション材を内蔵させます。例えばナイキの「エア」、アシックスの「GEL」、ヨネックスの「パワークッション」などが有名ですね。

 さらにミッドソールには、踏み込んだ時にシューズ内で足が横へ流れるのを防ぎ、シューズのよじれすぎを抑える機能も重要です。そのために組み込まれるのが「シャンク」というパーツで、足裏の中央あたりに、樹脂やカーボンなどのプレート状に内蔵されています。

 そんなミッドソールの下に位置し、コートとの接点となるのが「アウターソール」です。素材は主に「ゴム」「ラバー」。もちろん色んな添加剤でコントロールされた合成ラバーです。耐摩耗性が高く、かつストップ&ゴーを適切に行なえる硬度や柔軟性が得られるように、ラバーが配合されます。

 高機能な素材をどこに導入するかは、メーカーによって傾向が見られます。例えばアシックスは安定性と衝撃緩和性。ヨネックスは軽量さとクッション感。アディダスやウイルソンは特に傾向はなく、色々なものを取り入れています。

 バボラはタイヤメーカーのミシュランのラバーを初代から一貫して採用。コンプレッサーという衝撃緩和システムも進化させながら使い続けています。アシックスがGELに代わる次世代の衝撃緩和+超軽量素材「FF=フライトフォーム」というミッドソール素材を導入したことにも、注目したいですね。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2020年8月号より抜粋・再編集

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