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海外テニス

元女王トレーシー・オースチンの息子ホルト、注目の“2世対決”を制し全米オープン初勝利!<SMASH>

内田暁

2022.08.31

かつて全米で最年少優勝を果たしたトレーシー・オースチンの息子ホルト(写真)が同じ2世選手のフリッツを下して2回戦へ駒を進めた。(C)Getty Images

かつて全米で最年少優勝を果たしたトレーシー・オースチンの息子ホルト(写真)が同じ2世選手のフリッツを下して2回戦へ駒を進めた。(C)Getty Images

 コートサイドに座るかつての天才少女が、目元を手で覆っていた――。

 遡ること43年……彼女は全米オープン決勝戦でクリス・エバートを倒し、16歳9カ月の“史上最年少優勝”の記録を打ち立てる。

 全米オープンの歴史の一部であり、引退後もコメンテーターとして大会の顔であり続けている、トレーシー・オースチン。そのレジェンドがこの日ばかりは、一選手の母として、コートサイドで固唾を飲み試合の動向を見守っていた。

 オースチンの息子のブランドン・ホルトが、広くテニス界の注視を集めたのは6年前。全米オープンのジュニア部門で、初戦を突破した時だろう。なおその時の全米ジュニアには、全豪オープン優勝者であるペトル・コルダの息子、セバスチャン・コルダも出場していた。

 加えるなら、前年の全米オープン・ジュニア優勝者は、元トップ10プレーヤーであるキャシー・メイの息子のテイラー・フリッツ。そのような流れもあり、 “二世ブーム”にテニス界が沸いた時勢でもあった。

 ただ、フリッツやコルダがジュニア卒業と同時にプロでも結果を出したのに比べ、ホルトが歩んだ道はある意味で堅実であり、別の言い方をすれば、同世代の影に隠れた。
 
 地元の南カリフォルニア大学(USC)に進んだホルトは、強豪“トロージャン”のメンバーに名を連ねるが、大学テニス界においてもトップという訳ではなかった。ケガにも長く苦しめられ、最後のシーズンの後半は、新型コロナウィルス感染拡大により試合そのものが消えた。

 卒業後はプロとして活動するが、ここでもやはり「キャリアを脅かすほどの」手のケガに見舞われる。

 今年1月に、約8カ月ぶりにコートに戻った時、彼のランキングは924位。「文字通り、まっさらからの再始動だった」と振り返るその地点から、彼は8カ月かけて300位近くまで這い上がった。

 今大会の全米オープン予選のワイルドカードがもらえたのは、母の威光もさることながら、それ以上に本人が刻んだ復帰の足跡ゆえだろう。

 そして彼は、手にしたチケットを自らの力で、当たりくじに変えてみせた。予選の3戦は、全てフルセットの死闘。しかも予選決勝は、勝利へのサービスゲームの途中で雨天中断に見舞われた。

「中断中、どこにサービスを打つべきかずっと考え、とてもナーバスになった」という試練を越え、24歳にして初めて手にしたグランドスラム本戦への切符。その時、コートサイドの母親は、涙を堪えられなかった。
 
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