25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF(国際テニス連盟)大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情や、ヨーロッパのテニス環境を綴る転戦記。
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僕はずっと日本国内の大会を回っていましたが、ある時から日本を離れ、国際ツアー(ITF主催の下部大会)を回るようになって3年が経過しました。そこで海外のプロ選手と練習するようになりましたが、その中で一番感じたのは、選手たちのレベルの高さではなく「練習のしやすさ」でした。
プロとは競技レベルが高い人のこと、と以前は思っていて、もちろんその通りではあるのですが、根本的な定義は「テニスを仕事にしている人」がプロです。プロと練習するようになって実感したのは、彼らはテニスの練習や試合を仕事としてやっている、その感覚や空気感です。それが日本で練習していた時との違いでした。
言い換えると、テニスへの思い入れとか周りとの比較、そうしたノイズがアマチュアに比べて少ないです。生まれて物心ついた時から、ほとんどずっとテニスだけして生きてきた彼らは、競争の世界で生きることがもう呼吸するくらい当たり前になっていて、毎日午前午後練習するのが日常生活。
毎週試合に出るプロの生活は当たり前であり、毎週の結果で一喜一憂している時間もなく、すぐ次の試合がやって来る。それを10年以上もひたすら続けているのは、テニス愛や情熱で年に数回の大会に意気込んで臨むアマチュア選手とは違います。
これまでトップジュニアとして歩んできた彼らですが、積み重ねてきた経験が全然違うので、意外にも負けることにもアマチュア選手よりずっと慣れています。そして周囲から見られることにも慣れていて、それをうまく受け流して対処することや、その中で気にせず自分のことをやり続けるスキルを持っています。
だからこそ、プロ選手はアマチュア選手の一喜一憂や喜び悲しみを通り越えて、遥かに淡々とやるべきことに向かって練習し、試合をするのです。もちろんテニスを深く愛していますが、好きとか嫌いとかモチベーションとか、そうしたものはとうに通り越したところでテニスと向き合っていて、その向き合い方がアマチュア選手との最大の違いだと僕は感じました。
当然、彼らはテニスを極めるほど強いのですが、そのレベルというより、その過程で得られていったノイズのないテニスとの向き合い方に、僕は一番プロフェッショナルを感じています。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパ各国の下部ツアーの風景
【PHOTO】ヨーロッパのテニス文化を象徴する「クラブリーグ」の情景集
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景
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僕はずっと日本国内の大会を回っていましたが、ある時から日本を離れ、国際ツアー(ITF主催の下部大会)を回るようになって3年が経過しました。そこで海外のプロ選手と練習するようになりましたが、その中で一番感じたのは、選手たちのレベルの高さではなく「練習のしやすさ」でした。
プロとは競技レベルが高い人のこと、と以前は思っていて、もちろんその通りではあるのですが、根本的な定義は「テニスを仕事にしている人」がプロです。プロと練習するようになって実感したのは、彼らはテニスの練習や試合を仕事としてやっている、その感覚や空気感です。それが日本で練習していた時との違いでした。
言い換えると、テニスへの思い入れとか周りとの比較、そうしたノイズがアマチュアに比べて少ないです。生まれて物心ついた時から、ほとんどずっとテニスだけして生きてきた彼らは、競争の世界で生きることがもう呼吸するくらい当たり前になっていて、毎日午前午後練習するのが日常生活。
毎週試合に出るプロの生活は当たり前であり、毎週の結果で一喜一憂している時間もなく、すぐ次の試合がやって来る。それを10年以上もひたすら続けているのは、テニス愛や情熱で年に数回の大会に意気込んで臨むアマチュア選手とは違います。
これまでトップジュニアとして歩んできた彼らですが、積み重ねてきた経験が全然違うので、意外にも負けることにもアマチュア選手よりずっと慣れています。そして周囲から見られることにも慣れていて、それをうまく受け流して対処することや、その中で気にせず自分のことをやり続けるスキルを持っています。
だからこそ、プロ選手はアマチュア選手の一喜一憂や喜び悲しみを通り越えて、遥かに淡々とやるべきことに向かって練習し、試合をするのです。もちろんテニスを深く愛していますが、好きとか嫌いとかモチベーションとか、そうしたものはとうに通り越したところでテニスと向き合っていて、その向き合い方がアマチュア選手との最大の違いだと僕は感じました。
当然、彼らはテニスを極めるほど強いのですが、そのレベルというより、その過程で得られていったノイズのないテニスとの向き合い方に、僕は一番プロフェッショナルを感じています。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
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