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海外テニス

【雑草プロの世界転戦記25】世界は広い! 打ち方にこだわらず、個性を生かして自由にプレーするのがヨーロッパ流<SMASH>

市川誠一郎

2024.08.03

ヨーロッパのテニス指導は“型”にこだわらない。一見変わった打ち方でも、それを個性として生かす考え方が浸透している。写真:市川誠一郎

ヨーロッパのテニス指導は“型”にこだわらない。一見変わった打ち方でも、それを個性として生かす考え方が浸透している。写真:市川誠一郎

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF(国際テニス連盟)大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情や、ヨーロッパのテニス環境を綴る転戦記。

―――◆―――◆―――

 僕は10年ほど日本のテニスアカデミーを拠点に活動してから、合計4年半ほど日本を離れて各国を転々としながら、ヨーロッパを拠点に活動しています。

 日本を出て思ったのは、「世界は広い」ということです。

 僕は動作やフォームの癖が非常に強く、何年かけて基礎練習を積んでも身体の使い方が変わらず、誰よりも練習していたのに全くうまくなりませんでした。日本では特に“打ち方”の指導が細かいため、そうした技術指導で教わっていることをいつまで経ってもできるようにならないことが大きな苦痛でした。

 また、日本のスポーツ界特有の体育会的な縦社会や、コーチに思ったことが言えない文化、周囲と比較しがちな文化なども大きなストレスで、コーチに言われたことが気になって毎日寝られない日々が続きました。
 
 それを当時は当たり前と思っていましたが、ヨーロッパに来ると、これまで日本で当然だと思っていた指導は全くなく、日本なら口答えと捉えられることも平気で言えます。変な打ち方をしている選手もたくさんいて、それぞれの個性が生かされるように自由にプレーしており、滅茶苦茶な打ち方をしている選手がすごく強かったりもします。テニスは本当に自由なんだ、ということを強く感じました。

 これまで縛り上げられていたようなものが全くなくなって、雲が晴れ上がったように解放された僕は、余計なストレスなく、思いわずらわず、思い切りテニスに打ち込めるようになりました。

 テニスに限らず、ひとたび外の世界に出ると、これまで自分が常識と思っていたことは非常に狭いものだったと気付きます。それは中にいた時には視野が狭くなっていて全く見えておらず、外に出てみないとわかりません。僕の場合は、ヨーロッパで自分に合った場所を見つけることができました。

 もちろんヨーロッパに来たからテニスがうまくなるとは限りませんが、人それぞれ能力が生きる環境は違います。同じ環境で根気強く取り組むことと、時には視野を広く持つこと――そのバランスの取れた決断が重要だと思います。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

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