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海外テニス

大会の魅力は十分あったATPカップ。身体の負担、女子の意見。新設大会だからこそ生まれる課題にテニス界が迎えようとしている転換期

内田暁

2020.01.13

ナダル擁するスペインは準優勝。移動距離、深夜に及ぶ試合と、エースにかかる負担は各国ともに大きかった。(C)Getty Images

ナダル擁するスペインは準優勝。移動距離、深夜に及ぶ試合と、エースにかかる負担は各国ともに大きかった。(C)Getty Images

 新年早々にラファエル・ナダルとノバク・ジョコビッチの両雄が相対し、最終的にはセルビアが、スペインを破って初代チャンピオンの栄冠に輝く――。

 ATP主催の国別対抗戦として産声を上げたATPカップは、連日連夜熱戦続きで、ファンの応援合戦にも熱がこもった。スター選手は単複で獅子奮迅の活躍を見せ、ティム・ヘンマンやマラット・サフィンら往年のスター選手のキャプテン姿も、古株のテニスファンたちをうっとりさせる。主催者のATPやテニスオーストラリアにしてみれば、これ以上望めぬスタートを切ったのは間違いない。

 ただ、問題提起や批判の声が、内外から聞こえなかった訳ではない。特に、ATPカップ発足決定時から幾度も議題に上がってきた、「デビスカップの6週間後に、再び国別対抗戦を行なう必然性があるか?」の問いは、依然、宙に浮いたままだ。

 ナダルは「まるで、まだ昨シーズンが終わっていないようだ」と言い、ジョコビッチはデ杯の時にも繰り返した、「デ杯とATPカップを統合すべき」の提言を改めて強調する。セルビアの2番手を務めたドゥサン・ラヨビッチも、「わずか7日間しか休日は取れず、プレシーズンもたったの3週間。十分な準備期間とは言えない」と言い、「このことが、長期的にどのような影響を及ぼすのか、今季しっかり見ていかなくてはいけない」と進言した。
 
 また、これは“ワールドカップ型”に様式を変えたデビスカップでも見られた現象ではあるが、エース格の選手に掛かる負担が、あまりに大きいのは明白だ。ナダルとジョコビッチは共に、9日間でシングルス6試合、ダブルス2試合を戦い抜いている。

 この過酷なスケジュールで強いられるのは、試合による疲弊だけではない。拘束時間が長いため、通常のルーティーンを大きく狂わされることになるからだ。望むタイミングでマッサージや食事をとれないのは、リカバリーにも影響するだろう。当然、睡眠時間も削られる。準々決勝の対ベルギー戦後にナダルがベッドに入ったのは、翌朝の5時半以降だったと言う。

 さらに忘れてはならないのは、スペインとロシアの面々は、西海岸のパースでグループステージを終えた後、3,300キロの距離と3時間の時差を越えて、東海岸のシドニーまで移動しているという事実。開催地をどうするかは、今回、浮き彫りになった課題だろう。
 

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