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海外テニス

憤まんやるかたなく、試合途中でテニスコートを立ち去ろうとした相手に対し、バシラシビリが見せた神対応とは?

酒井朋子

2020.01.13

コートを去ろうとするクエバス(右)を説得するバシラシビリ(左)。(C)Getty Images

コートを去ろうとするクエバス(右)を説得するバシラシビリ(左)。(C)Getty Images

 今年初めて開催された男子テニス国別対抗戦ATPカップは、セルビアの優勝で幕を閉じた。熱い決勝戦に沸いたが、日本と同じグループBではテニスの大会ではあまり見られないシーンがあった。

 ウルグアイのパブロ・クエバスが奇妙なジェスチャーをしたことで警告を取られ、それに腹を立ててコートを去ろうとしたところ、相手国ジョージアのニコロズ・バシラシビリがなだめたというもの。

 ハプニングはグループステージの最終日、ウルグアイ対ジョージアのナンバー1の対戦中に起きた。第1セット、第9ゲーム、クエバスは自身のサービスゲームでバシラシビリに7回のブレークチャンスを与えたが、なんとかキープに成功し、バシラシビリリードの5-4でそのゲームを終えた。

 サービスゲームをキープした興奮そのままに、第10ゲームのポジションへと向かったクエバスは、ベンチから飛び出すように走り出し、雄叫びをあげながら威嚇するようなポーズを見せた。さらに、リターンの構えの際に、両足を必要以上にバタつかせたり、不必要なほど高くジャンプしたりしてみせたのだ。

 バシラシビリが40-0とセットポイントをつかんだとき、そうしたいくつものクエバスの態度を問題視した主審は、クエバスに対してコードバイオレーションを言い渡した。それに対して怒ったクエバスは「クレイジーなのか⁉」と主審に暴言を吐くなどし、スーパーバイザーを呼ぶよう要求した。
 
 スーパーバイザーとの長いやりとりでも気が収まらなかったクエバスは、荷物をまとめてコートを去ろうとし、会場はブーイングに包まれた。ここで終わればクエバスの行動と激怒で、ウルグアイ対ジョージア戦は後味が悪いものになっていただろう。

 それを食い止めたのが、対戦相手のバシラシビリだ。試合を放棄しようとするクエバスを見たバシラシビリは、クエバスに歩み寄り、肩に手を置いて試合を続けるように説得した。クエバスはその説得に応じ、試合再開を決断。会場のブーイングは歓声に変わった。

 クエバスが試合を投げ出せばバシラシビリの勝利となるところだったが、最後まで戦う方を選んだのだ。試合は6-4、 1-6、 6-4の2時間8分の戦いの末にバシラシビリが勝利し、ジョージアがATPカップでの初勝利を挙げた。バシラシビリのスポーツマンシップ精神がもたらした、チームメイトも対戦国も観客も、全てを笑顔にする美しい勝利だった。

文●酒井朋子(ライター)
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