東京世界陸上の女子砲丸投げと円盤投げに出場し、円盤投げで銀メダルを獲得したオランダのヨリンデ・ファン・クリンケンが、メダル獲得を心から喜べない心境を明かした。オランダ公共放送『NOS』が報じた。

「ファン・クリンケンは円盤投げ競技の後、首から銀メダルを下げ、肩にはオランダの国旗をかけて東京・国立競技場を闊歩した。しかし、彼女は世界大会での初めてのメダル獲得を心から喜んでいるのだろうか。そうではない。ファン・クリンケンは悔しさを露わにし、“不祥事だ”と批判した」

　このように記した同メディアは、ファン・クリンケンの心の内を伝えた。

「彼女はSNSに心境を綴った。“私は世界ランキング３位なのに、いまだスポンサーが１社もない”。さらに某スポーツブランドのスローガンを引用し、“私たちはスポーツに取り組む女性を応援します※”と投稿。米印の説明として、“一部の女性、一部の競技だけ”と皮肉を込めた」

　ファン・クリンケンは『NOS』の取材に対し、「メダルを獲ればスポンサー契約を得られると思っていたけれど、今のところそうではなさそう。とても不公平だと思う。もし私が短距離走者や長距離走者だったら、すでに数百万ユーロ規模の複数年契約を結んでいたでしょう」と語った。

　ファン・クリンケンは、円盤投げや砲丸投げの選手は他競技のアスリートと比べて冷遇されていると感じているという。

「自分の種目で世界トップクラスになっても、大手ブランドは気にも留めない」。その理由のひとつに“外見”が関係していると感じているようだ。「人形のような見た目の選手だったら、簡単に契約できると思う。もし私の外見が少し違えば、実績なんて関係なかったかもしれない。投てき選手は古典的な美の基準に当てはまらない。それは本当にひどいと思うわ」。
  　続けてファン・クリンケンは、「多くの選手が発言することを恐れているのは分かっている」とコメント。「あまりにリスクが大きく、人を遠ざけることにもなりかねない。でも、私は自分が大事だと思うことを率直に伝えることが重要だと思っている。これは選手の間で大きなテーマで、私たちが他の選手と同じように稼げないのは本当に悔しい。男子の場合でさえ、世界記録を出しても十分ではないから」とも語った。

「本来なら世界選手権のメダルは歓喜をもたらすものだ。しかし彼女はまだ実感できていない。それでも気付いてはいる。“私は世界選手権で個人メダルを獲得した数少ないオランダ人女性アスリートの特別なグループに加わった”と。オランダ女性選手の個人メダルはファン・クリンケンで６人目だ」

　同メディアはこのように、ファン・クリンケンのメダル獲得を称えたが、ファン・クリンケン本人は一日でも早く、メダリストの実感を味わいたいと願っている。

「女性個人で６人目のメダリストだけれど、そう自分に言い聞かせなければ私が世界選手権のメダリストという実感は湧いてこない。現状、世界で２番目の選手なんだと理解するのは難しい。心から実感できる日が来るのが待ち遠しいわ」

　ファン・クリンケンの発言は、オランダ国内で大きな注目を集めている。

構成●THE DIGEST編集部

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