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食と体調管理

「思いに応えようというのが競技を続ける大きな支え」スキージャンプ・船木和喜のジャンプを続ける原動力と日々を支える食習慣

松原孝臣

2026.02.09

写真撮影:岩瀬孝文

写真撮影:岩瀬孝文

 アスリートへのインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場するのは、スキー・ジャンプのオリンピック金メダリストであり現在も競技者として活動を続ける船木和喜さん。第一線で活躍した経緯、その土台となる食への意識、今後への思いなどを聞いた。

――スキージャンプを始めたきっかけを教えてください。

 僕は北海道余市町の出身なんですけども、同じ余市出身の笠谷幸生さんという札幌オリンピックの金メダリストの方がいらっしゃいました。笠谷さんの功績のおかげで少年団ができて、整備されたジャンプ台が身近にあったのがきっかけです。

――最初に飛んだのはいつだったのでしょうか。

 小学校1年生のときからアルペン競技をやっていて、5年生のときに初めてジャンプを飛びました。最初から怖さはなくて、むしろアルペン競技の方が恐怖心が強かったので、すんなりジャンプを始められましたね。

――そこからジャンプに打ち込み始めたんですね。中学時代から日本一になるなど活躍されましたが、ジャンプの選手として本格的に取り組んでいきたいと思ったのはいつからだったのでしょうか?

 高校2年生のときですね。企業から卒業後に所属しないかと声をかけていただいて、ジャンプで給料がもらえて生活ができると考えたときに決断しました。

――社会人になって1年目の1994-1995シーズンから世界選手権に出場するなど日本代表で活躍されるようになりました。オリンピックを意識するようになったのはいつ頃だったのでしょうか。

 1994年のリレハンメル大会のときはそこまでオリンピックに関心はなかったですね。世界を転戦していく中で、98年は長野での開催ということもあり、照準がそこに向かっていったように思います。
 
――そして1998年、長野オリンピックを迎えます。ノーマルヒルで銀、ラージヒルと団体戦で金メダルと圧倒的な強さを見せました。今も多くの人の記憶に残っています。

 そうだとありがたいんですけど(笑)。

――あれからもう30年近くが経ちますけれども、今でも記憶として強く残っているのはどんなことでしょうか。

 だいぶ時間が経ちましたので曖昧な記憶になりましたが、当時の宿で食べていた毎日の食事ですね。オリンピックに入る10日ぐらい前から食事の時間を試合に合わせて摂っていて、宿の方がいろいろ工夫をしてくれておいしいものを食べられていた。そうしたサポートのおかげでストレスなく試合に臨めたんじゃないかと思います。

――ストレスというのは、どういうものだったんでしょうか。

 オリンピックに限ったことではなく、試合になれば期待とかプレッシャーがかかってくるのは当たり前ことだと考えています。でも、それを重圧として感じてしまうときはどうしてもあって、ストレスがたまると頭がパンパンになってしまうので食事でリラックスできたことはすごく助かりました。

――思い出に残っているメニューはありますか?

 スープ系ですね。これだけはお願いして作ってもらっていました。

――食事がストレス軽減に大きかったというお話ですが、日本のエースとして期待される中、3種目全てであれだけのパフォーマンスを発揮できた要因は何だったのでしょうか。

 五輪に焦点を絞らずにシーズンを通して試合に出ていたからだと思います。長野と同じ冬のシーズンだけでワールドカップが36試合くらいあって、その中の一つがオリンピックという感覚でした。特別な試合だと思わなかったことが一番かもしれないです。

 しかも当時の日本代表チームは力のある選手が15人くらいいました。そのうちワールドカップに出られるのは8名です。ちょっと調子が悪くなると代わりの選手がたくさんいるわけですから、全試合、全力でやらないといけなかった。オリンピックになると試合に出れるのは4名になりますが、毎試合そうやって取り組んでいたことでオリンピックも特別に意識せずに臨めたのかなと思います。対戦する海外の強いチームも年間を通してメンバーが大きく変わることはなかったですね。

――長野のあと、所属していた企業を辞めて会社を立ち上げました。当時大きな話題になりました。

 はい。長野オリンピックの翌年に所属していた企業を辞めて、会社を立ち上げて競技活動を続けました。理由は海外の選手がみんなプロでやっていたからです。当時の日本ではプロというあり方は認められていませんでした。そうした環境のなかで、実質プロという生き方に挑戦してみたいと思ったんです。

 いま考えると企業所属という安定した環境を捨てて馬鹿なことをするなと思いますけど、自分で会社を立ち上げたからこそ、今でもジャンプを飛べていると思うんです。アスリートとして企業にいる以上はいつか肩を叩かれたり、競技を辞める選択をしないといけない時期が必ず来ると思うので。
 

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