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格闘技・プロレス

『武尊最高!』と叫ばずにいられなかった夜――因縁の相手ロッタンとの引退マッチで魅せた“完成形の戦い”

橋本宗洋

2026.04.30

武尊が引退マッチで因縁のロッタン相手に完勝。写真提供:ONE Championship

武尊が引退マッチで因縁のロッタン相手に完勝。写真提供:ONE Championship

 最高の結末だった。こんなことが本当にあるのかとさえ思えた。

 4月29日、アジア最大級の格闘技団体ONE Championshipは日本での新シリーズの第1回となる『ONE SAMURAI 1』を有明アリーナで開催。メインイベントは武尊の引退試合だった。
 
 新生K-1で3階級制覇を果たし、2022年には那須川天心との“世紀の一戦”を東京ドームで実現させた武尊。その後、ONEと契約したのはムエタイ最強の倒し屋ロッタンと闘うためだった。

 昨年3月の対戦では1ラウンドKO負けを喫した。それまでの負けは、那須川戦も含め判定か負傷ストップ。初めて“ぶっ飛ばされ”ての敗戦は、キャリア最大の屈辱だったという。

 昨年11月に復活勝利を挙げると、次戦での引退を表明。相手はロッタンしか考えられなかった。34歳で迎えた最後のリングは、ONEキックボクシングのフライ級暫定王座決定戦でもあった。

 武尊の真骨頂は、自ら「頭のネジが外れてる」と言うほどの打ち合いだ。リスクを承知で前に出て殴る。殴られても殴り返す。「打ち合いになったら前に出ているほうが強い」というのが身上だった。

 このラストマッチ、絶対に負けたくない試合でも武尊は打ち合った。満員の観客から何度も発生した武尊コールの中、時に「こいよ!」と相手を煽り、笑顔も見せる。これは新人時代からのトレードマークのようなもの。強い相手と打ち合っていると楽しくなってしまうのだという。

 ただそれだけではなかった。これ以上ないほど落ち着いてもいた。「興奮を抑えながら闘ってました」とは試合後のコメント。「まず削ってから」倒しにいこうとしたとも。序盤からローキック(カーフキック)を多用して、少しずつダメージを与えていく。2ラウンドに2度のダウンを奪ったが、攻め急ぐことはなかった。

 ロッタンの反撃にも冷静に対処して、クライマックスは最終5ラウンドに訪れた。前に出て殴る。しかし闇雲にではない。コンパクトに連打をまとめることを意識した。このラウンド2度目、合計4度のダウンでレフェリーが試合を止めた。選手生活最後にして最高の試合だった。こんな“終わり方”ができる選手が他にいるだろうか。

 試合後、公式の勝利者インタビューの後にもリング上で語ろうとした武尊だが、マイクが切れてしまうアクシデントがあった。22時以降は音響設備が使えないという会場の事情だったという。

 そこで武尊は、観客に地声で語りかけた。自分には才能なんてなかった。それでもここまでこれた。だから夢を持っている人は諦めないでほしい。何度も繰り返したのは、これからの格闘技界のことだ。

「次に(格闘技界を)引っ張ってくれる選手が出てくるまで、みんなで格闘技を盛り上げてください」

 インタビュースペースでも「これからも僕ができることは協力します。どの団体も一緒に盛り上げましょう」と語った武尊。格闘技の魅力を体現し、ファンと業界へのメッセージとともにキャリアを終えた。

 K-1時代は、メイン後のマイクを「K-1最高!」で締めるのが恒例だった。それが団体の枠を超えた「格闘技最高!」に変わっていった。そして最後の試合を見届けた今、我々からこの言葉を贈るしかないだろう。
“武尊最高!”

取材・文●橋本宗洋

【動画】武尊がロッタンから3度目のダウンを奪う!
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