格闘技・プロレス

「AV女優がリングに上がるな」と言われても… ちゃんよた、初戴冠に詰まった“悔しさ”の5年

橋本宗洋

2026.05.27

ちゃんよたがPPP初代女子王座に就いた。写真:橋本宗洋

 プロレス界に、また一つ新しいタイトルが生まれた。男女混合団体PPPTOKYOの女子王座「Venus of Party The Woman's Championship」だ。

 PPPはアダルトビデオメーカー「ソフトオンデマンド(SOD)」とのコラボなど、独自の興行を展開してきた。SOD作品でおなじみマジックミラー号を借りて、その中で記者会見を行ったことも。

 5月21日の新宿FACE大会、初代女子王座を争ったのは、団体生え抜き同士のちゃんよたとエチカ・ミヤビ。どちらも"異色レスラー"と呼ばれるタイプだ。ちゃんよたは"筋トレYouTuber"からAVデビュー(現在は引退)。エチカはトランスジェンダーで、2024年に性別適合手術を受けている。デビュー当時から好奇の目、あるいは偏見をもって見られてきた。SNSやニュースサイトのコメント欄での誹謗中傷も当たり前だった。

 ただPPPという団体は、そういう2人をあくまで正攻法で育ててきた。高橋奈七永、水波綾、世羅りさといった実力ある選手たちとの試合を積極的にマッチメイクしている。

 力をつけたちゃんよたとエチカはスターダムやマリーゴールド、マーベラスといった団体にも参戦。またちゃんよたはボディコンテスト優勝でも話題となり、エチカはハードコアマッチやリングを使わないマットプロレスで経験値をつけ、ファイトスタイルの幅を広げている。
 

 代表の三富兜翔もまた"異色レスラー"だ。慶應大学卒で元・博報堂。エリートコースを捨ててプロレスと団体運営に打ち込んだ。"胸毛ニキ"こと八須拳太郎はBreakingDown出場で知名度を上げ、総合格闘技イベントDEEPにも参戦し続けている。新人の虎牙のんもAVからプロレスへ。リアラはキャバクラ嬢からの転身で、異名の一つは"顔面施工費1500万"である。

 それぞれ異色の経歴があり、個性が強く、だからこそ叩かれやすい。"イロモノ"的に見られがちだ。ただPPPのリングで展開されるプロレスは熱さ、ガムシャラさを重視したもの。正面からのぶつかり合いでファンを熱狂させる。

 試合に向けた調印式で、ちゃんよたはベルトについてこう語っている。
「(PPPは)チャラチャラしてると見られがちですけど、ベルトはデザインからして武骨。私も強さにこだわってやってきました。ポイントは強さに貪欲であること。愚直で強さを見せる試合をしたいです」

 エチカは、PPPの試合を「キャラクターではなく自分の人格をさらけ出すもの」と表現した。

「人生を反映した、人生観の闘い。ノンフィクションな闘いというイメージを(ベルトに)つけたいです」

 試合は期待通りの正面衝突となった。ちゃんよたのラリアット、エチカのチョップが互いの身体を削り合う。シンプルだからこそハードさが伝わる攻防と言ってもいい。

 そんな闘いを、代表の三富自らセコンドについて煽る。印象的だったのは、劣勢になった選手にかけていた「悔しくないのか!」という言葉だ。次に出すべき技や戦略的なものではなく、精神面に訴える。

 おそらく「悔しくないのか!」が、2人を最も鼓舞する言葉なのだ。ちゃんよたは「AV女優がリングに上がるな」と言われ、SNSに筋トレの動画を上げればやり方を指図される。エチカにはトランスジェンダーへの差別と偏見がそのまま突き刺さった。

 真剣にプロレスに取り組んでいるからこそ、悔しかったはずだ。ちゃんよたとエチカのプロレスキャリアは、言ってみれば悔しさをバネにして培ってきたもの。三富はセコンドとして、2人の生き様、その根本を刺激したわけだ。

 どちらにとってもベストバウトと言える激闘は、ちゃんよたがアルゼンチン・バックブリーカーの体勢からランニング式で投げ捨てるバーニングハンマーを決めて3カウントを奪った。ちゃんよたらしい、パワフルなフィニッシュだ。
    
「5年前の私だったらここで泣いてると思うんですが、心も身体も強くなったので泣きません」

 ベルトを巻いたちゃんよたは、そう言いながらも涙が溢れそうになっていた。叩かれて、悔しい思いをさんざんして強くなった。だがそれをも上回る感慨が込み上げてきた。

「自分の信じた道を突き進めば、みなさんも自分の道を正解にできるはずです」とも。

 試合後、すぐに挑戦表明したのは、タッグチーム「マッスルシスターズ」のパートナーであるZONES。さらにちゃんよたがプロレス入りするきっかけとなった夏すみれとのシングルも。これからチャンピオンとして、ベルトにどんな価値をつけていくかが問われるが、心配はいらないだろう。「武骨なベルト」にふさわしい初代王座決定戦だった。

取材・文●橋本宗洋

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