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ラグビー

【ラグビーW杯をヒット記事で振り返る!】もう奇跡とは言わせない。「4年間の努力」が結実したアイルランド戦の勝利は必然のアップセットだ

吉田治良

2019.11.10

日本代表勝利の瞬間、エコパスタジアムが歓喜に沸いた。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

日本代表勝利の瞬間、エコパスタジアムが歓喜に沸いた。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 壮観だった。

 言葉を失くした緑のジャージーの塊をカウントしなくとも、おそらくは4万人に近い人たちが、両手を振り上げ、声を張り上げていただろう。

 これまで目にしたことも、耳にしたこともない圧巻の万歳三唱が、エコパスタジアムのスタンドを脈打つように震わせている。

 世界ランキング2位のアイルランドを、9位の日本が飲み込んだのだ。その快挙に、誰もが等しく酔いしれていた。

 なるほど、たしかに歴史的な勝利には違いない。けれど、我々の目の前で起こった出来事は、「世紀の番狂わせ」でもなければ、もちろん「奇跡」などでもなかった。

 勝者に値するチームが、正当な結果を手に入れたに過ぎない──。

 そう思わせるほど、この日のジャパンは強かった。
 

 緊張でがちがちだった開幕のロシア戦とはまるで別人のように、キックオフの笛が鳴った瞬間から選手たちは落ち着き払っていた。インゴールで惜しくもキャッチできなかったとはいえ、開始4分にはCTBティモシー・ラファエレのキックパスに反応したWTB松島幸太朗が、いきなり右サイドで見せ場も作っている。

 それでも、先制したのはアイルランドだった。13分、負傷欠場した「世界最高峰の司令塔」ジョナサン・セクストンに代わってSOを務めたジャック・カーティが、中央から対角線にクロスキックを蹴り込むと、これをCTBガリー・リングローズがキャッチ。日本のFB山中亮平を振り切って右隅に飛び込んだ。

 直後に日本もSO田村優がPGを返すが、20分にアイルランドはまたしてもカーティの巧妙なショートパントで防御ラインの裏を突き、FBロブ・カーニーがトライ。コンバージョンも決まり、3-12と得点差を広げていく。

「特別なことをしてくるわけじゃないのに、終わってみれば負けている。80分間、ずっと手のひらの上で踊らされているような気分にさせられる」

 元日本代表の大西将太郎は、アイルランドの試合巧者ぶりをこんな風に表現していたが、あるいはこの日も同じ結末を迎えるのではないか──。そんな悪い予感も頭をよぎった。
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