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アスリートキャリア

元Jリーガーの事業家・嵜本晋輔氏が「アスリートのためのデュアルキャリア採用」を打ち出した狙いと近未来の壮大な夢

吉田治良

2021.01.20

アスリートは「みずからの可能性にフタをしてしまっている方が多いな、という印象」があると嵜本は言う。(C)Valuence Holdings Inc.

アスリートは「みずからの可能性にフタをしてしまっている方が多いな、という印象」があると嵜本は言う。(C)Valuence Holdings Inc.

 その言葉に説得力が宿るのは、Jリーガー時代の経験と大きな後悔が土台にあるからだろう。ガンバ大阪に入団するも、わずか3年で戦力外通告。その後ビジネスマンに転身し、ブランドリユース業で成功を収めた嵜本晋輔氏は、「アスリートは競技生活以外の選択肢を持つべきだ」と力説する。昨年9月、同氏が率いる『バリュエンスグループ』が、アスリートのためのデュアルキャリア採用を打ち出し、さまざまな理由で競技をあきらめざるを得ない人たちに手を差し伸べている。今回は嵜本社長本人に、このプロジェクトの狙いや企業としての理念、さらには今後の展望を聞いた。

──バリュエンスグループ(以下、バリュエンス)では、アスリートのデュアルキャリア、つまり競技生活と社会人生活との両立を支援する取り組みに積極的ですね。昨年9月にはアスリートのためのデュアルキャリアプロジェクトとして、『アスリート100人採用』というものを大きく打ち出されましたが、その後の進捗はいかがですか?

嵜本晋輔(以下:嵜本) これまでに30~40名のアスリートの方と、弊社人事部の担当者が面談をさせていただいて、実際に採用に至った方が現時点で4名、前向きに検討いただき、選考中の方が3名ほどいらっしゃいます。まだ人数は少ないですが、これまでアスリートと接点のなかった人事担当者が、彼らの抱えている問題やニーズを、面談を通して知ることができたという意味でも、非常に価値があったと思います。

──アスリートの方からは具体的にどんな声が聞かれましたか?

嵜本 自分は競技の世界しか知らないと、みずからの可能性にフタをしてしまっている方が多いな、という印象がありますね。採用に際しては、こちらから業務を押し付けるのではなく、それぞれの適性に合ったお仕事を提案させていただいていますが、確かに我々のブランドリユースビジネスというのはアスリートにとって無縁の世界で、ちょっとイメージが湧きづらい部分はあるのかもしれません。ただ、さまざまな事情で競技を続けたくても続けられないアスリートの方々に手を差し伸べる弊社の取り組み自体は、高く評価していただいています。今後、デュアルキャリアという働き方に対する認知が深まっていけば、より多くの方に入社していただけると考えています。
 
──現時点で4名にとどまっているのは、採用の基準が厳しいからでしょうか?

嵜本 決して基準は高くありません。競技を続けられずに困っている方々に対して、いかに私たちが寄り添えるかというスタンスで面談をさせていただいていますが、ただ現時点では、弊社の人事担当者がしっかりとアスリートの立場や意向を汲み切れていないという課題もあります。現在、人事担当者がアスリートキャリアコーディネーターの資格を取得しようと自発的に行動してくれていますが、そうして受け入れ側の態勢が整っていけば、自然と採用も増えていくはずです。

──デュアルキャリア採用は、いわばアスリートを救い上げる取り組みですが、御社にとってのメリットは?

嵜本 バリュエンスのミッションは、「らしく、生きる。」世界の実現です。ありのままの自分をさらけ出しても認められ、尊重される世の中。幸せとか豊かさをひと言で表わすと、それは一人ひとりが自分らしく生きられるということなんじゃないかと。なかなか自分のやりたいことに手を伸ばせず、人生をかけて夢中になれるものを見つけるのが難しい社会ですが、しかしアスリートというのは、すでにそれを見つけられている状態にあるんです。そういった人たちが、なんらかの理由で夢や目標を手放さなくてはならないとしたら、それは機会損失に他ならない。やはり何かに夢中になっている人のほうが、ビジネスの世界でも成果は出やすいものなんです。
 

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