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マラソン・駅伝

【瀬古利彦リーダーの目】鈴木健吾の走りは「まさに理想的なフォーム」。期待を背負って結果を出せれば「本物だ」

永野祐吏(THE DIGEST編集部)

2021.05.12

ラスト5キロを驚異的なタイムで走った鈴木健吾を評価する瀬古氏。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

ラスト5キロを驚異的なタイムで走った鈴木健吾を評価する瀬古氏。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

 非アフリカ生まれの選手として初の2時間4分台という“夢の記録”が日本で生まれた。2月28日に開催された『びわ湖毎日マラソン』で25歳の鈴木健吾が、大迫傑の持つ日本記録(2時間5分29秒)を33秒塗り替える、2時間4分56秒で走ったのだ。

 気温や風などの気象条件に恵まれた中、前半は体力を温存しながら大集団の後方でレースを進めた鈴木。先頭集団の人数は徐々に絞られ、33キロ過ぎにはサイモン・カリウキが引っ張り、鈴木、土方英和が付いていく展開となった。しかしカリウキのペースは次第に落ち、35キロから36キロの1キロは3分4秒に。

 カリウキの真後ろで仕掛け所を伺っていた鈴木に、36.2キロの給水地点で思わぬアクシデントが襲いかかる。なんと自分のドリンクを取り損ねたのだ。しかし鈴木はこの出来事をプラスに変え、2人が給水している隙に一気に2分50秒台にペースアップし、後続を突き放した。この賢明な判断と後半の驚異的なラップが大記録へとつながった。

 日本陸上競技連盟のマラソン強化・戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏は、この鈴木のレースを「100点以上」と高評価。37.195キロからのラスト5キロを14分24秒と驚異的なタイムでまとめたことに「ワールドクラスだよ。これを見たら世界と戦える力があると思った」と驚きの表情で語った。

 実は、鈴木の才能と実直さに以前から将来性を感じていたという。2018年日本陸上競技連盟が主催したニュージーランド合宿に参加した鈴木を見た時から「効率のいい走りで、長い距離にセンスあるなと思っていた」と目をつけていたことを明かした。ミーティングの時には「ずっと私の目を見て話をよく聞くんだよね。瀬古さんの技術を盗んでやろうみたいな感じ」と才能に奢ることなく堅実な姿勢で練習を積んでいたそうだ。
 
 この努力が功を奏し、元々ロスの少ない走りにさらに磨きがかかったようで、今回は特に最後まで「ゼッケンの位置が全然変わらなかった。まさに理想的なフォーム」と上下動が小さい走りになっていたと瀬古氏は称賛した。

 ただ、現状で満足してほしくないとも瀬古氏は言う。「力が無ければ出ない記録」と前置きしながらも、「今度は狙って、期待されて、自分が思ってたような記録で走ったら本物だと思う」とさらなる高みに期待を寄せ、「いろんなレースを経験しながら、オリンピックでも戦えるもの身につけてほしい」とパリ五輪に向けてアドバイスを送った。

取材・文●山本祐吏

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