若くしてウクライナ柔道界を牽引してきたエースが、清々しい笑顔で表彰台にのぼった。

　７月24日に開催された東京五輪・女子柔道48キロ級。ウクライナ代表で、世界選手権連覇中のダリア・ビロディドは苦しみながらも２連勝を飾り、準決勝へと駒を進めた。対峙したのは過去に幾度となく死闘を繰り広げたライバル、日本の渡名喜風南だ。延長にもつれ込んだ接戦の末、ビロディドは横四方固めから１本を取られて敗北を喫した。
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　３位決定戦ではシラ・リショニー（イスラエル）から崩れけさ固めで１本を奪って勝利し、なんとか銅メダルを手中に収めた。さまざまな感情が飛来し、とめどなく流れる涙を拭いながら、20歳にとって初の五輪は終焉を迎えたのである。

　ビロディドは日本時間の深夜になって、自身のSNSを更新。表彰式でメダリストたちと並んで撮影した記念写真などを掲載し、その胸中を赤裸々に明かした。

「６歳から柔道を始めて、ずっと夢に見てきた舞台に立てた。オリンピックで金メダルを獲るためにすべてを捧げて、どんなに辛い練習も苦い経験にも立ち向かい、過ごしてきた日々。そして今日、私の夢が断たれた。金メダル以外はいらない。もうすべてを投げ出したい、それくらい酷く打ちひしがれていたの」

　そして、コーチでセコンドの母スベトラーナさんが、控室の通路で絶望するビロディドに発破をかける。

「お願いよ、私のためにメダルを獲ってきて！」
  　元柔道家のスベトラーナさんは五輪に出場した経験がなく、父のゲンナシーさんも国内屈指の柔道家だったが、過去３度の五輪出場でメダルには手が届かなかった。娘の育成に心血を注いできた両親の想いを受け止め、ビロディドは奮い立ったという。

「よし、ママとパパのためにやろう。ふたりにこのメダルを掛けてあげるんだ。いつも最高のアドバイスをくれる母には感謝の言葉しかない。今回も完全に諦めていた私を起き上がらせてくれたのだから。いま、私はメダルの本当の価値を噛み締めている。銅だけど、金色に輝いて見えるの。なぜならこのメダルは、私がいろんな困難や生涯を乗り越えて到達したもの、歩んできた人生そのものなのだと気づかされたから」

　最後に「夢はまだ続くわ。これだけは誰にも奪えないのよ」と綴り、３年後のパリ五輪を見据えたビロディド。２度目の檜舞台ではきっと、心身ともにバージョンアップした姿を披露してくれるはずだ。

構成●THE DIGEST編集部

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