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「まだ心の準備ができてない」引退表明のロッシが複雑な心境を吐露。パートナーの誕生日を祝う投稿も

甘利隆

2021.10.16

フランチェスカさん(左)の誕生日に、ロッシ(右)は「お誕生日おめでとう。愛してる!!!」とメッセージを送った。(C)Getty Images

 2021年シーズン限りで現役を退くことを表明しているヴァレンティーノ・ロッシ(ペトロナス・ヤマハ・SRT)。ここまですでに15レースを終え、引退まであと3レースを残すのみとなっている。

 また、今年8月の後半にはパートナーのフランチェスカ・ソフィア・ノヴェッロさんが女の子を妊娠していることも公表。地元イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで開催された第14戦サンマリノGPには、来年2月に生まれる予定の第1子への愛情を表現して、頭頂部にピンクのリボンが大きく描かれたスペシャルヘルメットでレースへと臨んだ。

 ヘルメットの後頭部に入れられた「Chissà, chissà chi sei(君は誰なんだろう) Chissà che sarai(君は何になるんだろう) Lo scopriremo solo vivendo(生きていればいずれ分かるよ)」という言葉は、イタリアの人気歌手ルーチョ・バッティスティのヒット曲『Con il nastro rosa(ピンクのリボンをつけて)』の一節だということで、このあたりからもロッシのまだ見ぬ娘への思いが伝わってくる。

 フランチェスカさんの誕生日である10月14日には「Buon Compleanno Amore!!!(お誕生日おめでとう。愛してる!!!)」とのコメントを付け、ふたりの仲睦まじい様子を自身のSNSにアップ。プライベートの充実ぶりを覗かせると、世界中のファンからおよそ100万件の「いいね!」と数千件に及ぶコメントが集まった。

 このように公私ともに大きな出来事が続いたこの1年だが、引退を間近に控えた42歳のスーパースターの心境は、やはりまだ複雑なようだ。

「この15年間、パドックで僕の引退は常に話題になってきたけど、もう少し走りたかったし、以前はそのことをあまり考えたことはなかった。オーストリアで引退を発表し、その時はまだ実感がなかったんだけど、今は違う。人生が劇的に変化しようとしていることに気付いて、いざ最終戦のことを考えると少しパニックになった。僕はまだMotoGPライダーでなくなる瞬間を迎える心の準備ができていないんだ」と最終戦バレンシアGPの舞台となるDAZNスペインのインタビューに答えている。
 
 しかし、胸に去来するのは寂しさだけではないようだ。

「別れは決して簡単なことではないけど、それでもその瞬間には良い感情が湧き上がると思う。バイクに乗る以外にもまだまだたくさんやることがあるし、これからもライダー、アスリートであり続け、このライフスタイルを続けていきたい」

 再びミサノで行なわれる次戦のエミリア・ロマーニャ&リビエラ・ディ・リミニGPが、いよいよ"THE DOCTOR"の地元でのラストレースになるが、ここに来て、新たな情報も入ってきている。

 新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、先日のサンマリノGPでは収容人数の上限が2万5千人までとなっていたが、イタリア政府が新たに発表した、屋外でのスポーツイベントの最大収容人数を75%まで引き上げる法令に従い、次のレースでは1万人が追加され、1日あたり3万5千人が入場できることになった。

 新型コロナが蔓延する以前の2019年には決勝日だけで9万6千人の大観衆が詰めかけたことを考えると少ない数字ではあるが、レースウィークのスタンドは、ロッシのイメージカラーである蛍光イエローであふれること間違いないだろう。

文●甘利隆
著者プロフィール/東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter:ama_super