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格闘技・プロレス

井上尚弥、ドネア撃破で漂った精神面の飛躍。2年7か月前の初対戦と比較して“モンスター”は何が違ったのか?

杉浦大介

2022.06.08

終始主導権を握りながら、ドネアを打ち破った井上。貫禄すら漂わせたパフォーマンスは、間違いなく歴史に残るものだった。(C)AP/AFLO

終始主導権を握りながら、ドネアを打ち破った井上。貫禄すら漂わせたパフォーマンスは、間違いなく歴史に残るものだった。(C)AP/AFLO

 6月7日、さいたまスーパーアリーナに集まった1万7000人の大観衆の前で、WBAスーパー、IBF王者・井上尚弥(大橋)がWBC王者ノニト・ドネア(フィリピン)を返り討ちにしたのは大方の想定内だった。約2年半前の第1戦でもボディブローでKO寸前までいったこと、39歳というドネアの加齢を考慮すれば、KO決着は何ら予想外ではなかった。

 ただ、それにしても2回1分24秒という速さで、これほどまでに完璧な決着を見せてくれるとは思わなかったというのが正直なところだ。

「やる前から必ず言葉にしていたのが『ドラマにするつもりはない。この試合は一方的に勝つんだ』。そういう思いでプレッシャーをかけてこの試合に挑みました」
【動画】ドネアを渾身の左フックで撃破! 井上尚弥のKOシーンをチェック
 
 試合後のリング上で井上はそう振り返っていたが、実際に今戦ではいい意味での緊張感が目についた。わずか4分半という短いサンプルではあるが、競走馬でいうところの“入れ込みすぎ”という状態だった第1戦と比べ、パンチ、フットワークはよりスムーズで無理がなかった印象がある。

 一撃必倒のパンチを持つドネア相手では一瞬のミスが命取りになる。それだけに試合開始早々に右目をかすめた左フックによって、警戒心がより強まるというプラス材料があったのは理解できる。「おかげでしっかりピリついて試合を立て直すことができた」という当の井上の言葉は正直な思いの吐露だったはずだ。試合後に故障があって万全の体調ではなかったことを示唆してはいたが、少なくとも精神面では、この日の井上は緊張感が力に変わるという最高の状態だったのではないか。

 1ラウンド終盤、ドネアが「見えなかった」という右ストレートで井上が最初のダウンを奪った瞬間に、勝負は事実上決まった。もちろん偶然などではなく、実力上位だからこそ放てた必然のカウンターパンチ。2回に左フックでダメージを与えた後の詰めも、キャリア序盤に悪目立ちした顎が上がる悪癖は影を潜め、ほとんど隙のないフィニッシュだった。
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