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ラグビー

初優勝への転機となった運命のハドル。スピアーズのキャプテン立川理道は、円陣でどんなメッセージを送ったのか?【リーグワン】

吉田治良

2023.05.21

ゲーム終盤に組んだハドルで意思統一を図った東京ベイ。逆転勝利への礎となった。写真:西村尚己/アフロスポーツ

ゲーム終盤に組んだハドルで意思統一を図った東京ベイ。逆転勝利への礎となった。写真:西村尚己/アフロスポーツ

 ゲームを支配していたつもりなのに、最後に笑っているのはいつも王者だった。自慢のフィジカルで押し込みながら、挑戦者には手のひらの上で踊らされているような感覚がつねにまとわりついていた。

 トップリーグ時代を含め、16年ぶりに埼玉パナソニックワイルドナイツからの勝利を狙った、3月の敵地・熊谷での試合もそうだった(ラグビーリーグワン ディビジョン1第10節)。

【動画】白熱のシーソーゲームを制した東京ベイが初優勝!
 風上の利を生かして前半を12-10とリードして折り返しながら、終わってみれば15-30の逆転負け。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケHCは試合後、「後半のラスト10~15分で精度の差が出てしまった」と悔やんだ。

 悲願の初優勝を目指し、リーグワンプレーオフ決勝でふたたび昨季王者のワイルドナイツと相まみえた国立競技場での大一番も、似たような展開となる。珍しく規律を乱し、ミスや反則を繰り返したワイルドナイツに対し、スピアーズはSOバーナード・フォーリーのPGで着々と加点。前半を9-3で折り返すと、後半立ち上がりの46分にもオーストラリア代表の10番がPGを決めて点差を9点に広げた。

 しかし、試合巧者ワイルドナイツもこのまま引き下がらない。50分に堀江翔太、55分に山沢拓也と立て続けに千両役者を投入すると、直後の58分にドライビングモールから堀江がこの試合の初トライを取り切って2点差に詰め寄る。さらに65分にはスピアーズ陣内で13フェイズを重ね、最後は山沢からの飛ばしのパスを受けたWTB長田智希が逆転のトライを決めたのだ。

 12-15──。スピアーズの面々の脳裏には、嫌な予感がよぎったに違いない。だが、2部のトップイーストリーグに沈んだ低迷期を知るキャプテン、立川理道はあくまでも冷静だった。逆転された直後、インゴールで組んだハドル(チームミーティング)で、彼はチームメイトにこう問いかけた。

「このままキックを蹴るのか、(ボールを保持しながら)アタックするのか──」

 この日、プレーオフ準決勝後から1週間をかけて準備をしてきたというキック戦術は、非常に効果的だった。ハイパントだけでなく、グラバーキック、チップキックなどバリエーションに富んだキックを蹴り分けることで、ワイルドナイツに守備の的を絞らせなかったのだ。だからこそ、キャプテンに迷いはなかった。

「まだ時間もありましたし、ここで無理をして戦術を変えれば、逆に相手の思う壺になってしまう。自分たちの用意してきたキック戦術を継続し、相手にプレッシャーをかけ続けることが、あの時間帯では重要でした」

 ただし、何よりも大切だったのは、その意図をチームの全員が正しく共有することだった。それは、過去の苦い経験が教えてくれていた。

「全員が同じ絵を見ていなかったせいで、これまではこういう場面で何度となくパナソニックさん(ワイルドナイツ)に点差を広げられてきました。ただ今日は、あのハドルでの話し合いのなかで、バーナードをはじめとしたチームの全員で意思統一ができた。点差ではなく時間帯を見ながら上手くゲームをコントロールできた結果として、木田(晴斗)のトライが生まれたんだと思います」
 
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