格闘技・プロレス

「これは素晴らしい!」絶対王者を”ルーレット選出”した革新的システムに仏記者は喝采。 一方で、「柔道に対する新たな不信感」と疑念の声も【パリ五輪】

THE DIGEST編集部

2024.08.04

リネール(青)が斉藤(白)から一本勝ちを収め、右手を高々と上げた。(C) Getty Images

 無作為な"ルーレット方式"が物議を醸している。

 現地8月3日、パリ五輪は柔道の混合団体決勝が行なわれ、日本は前回王者フランスと対戦し、3勝4敗で敗れて銀メダルに終わった。

 柔道最強国を懸けた頂上決戦は、まさに死闘だった。両軍とも3勝3敗で決着がつかず、勝敗は第7試合の代表戦に委ねられた。対戦階級は、会場の大きなビジョンでそれぞれの階級の数字がクルクル回るデジタル・ルーレットの階級で決まる。そして、これが大きなドラマを演出した。

 決着をつける階級が青い文字の「+90Kg」のところでピタリと止まると、会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。なぜなら、母国の英雄であり、今大会100キロ超級で3度目の五輪王者に輝いたテディ・リネールだったからだ。絶対王者に対し、第3試合で敗れた斉藤立は気合を入れ直して再び挑んだが、初出場の22歳にはやはり分が悪く6分26秒、リネールが大内刈りで一本勝ち。王者が大逆転で東京大会に続く金メダルをフランスにもたらした。

 無論、ドラマティックな展開に現地記者は大興奮だ。地元メディア『Cryptoast』のジャーナリストであるリリアン・クリプトースト氏は「テディ・リネールをゴールデンマッチに送り込むルーレットは、まさに伝説に残る!」と大喜び。同じくフランスの地域紙『LeTelegramme』のクレマン・ベソウド氏は「ハハハハハハ。またリネールだ!このルーレットは素晴らしい」と自身のX(旧ツイッター)に綴り、この革新的なシステムを歓迎した。
 
 だが一方で、デジタルで選考される方法に疑問の声が上がっている。地元記者のバスティアン・ブランディン氏は「運が良かった」と漏らし、「このルーレットシステムは、フランスの管理官によって操作されているのか?」と疑惑の目を向けている。

 欧州メディアからも異論が挙がっている。ポルトガルのスポーツメディア『Central do Timão』のダニエル・ケプラー記者は「どんな種類のデジタル抽選であっても、私は信頼できない」と述べ、この選考方法に憤りを隠せない。そして、「柔道のルーレット・システムが、このスポーツに対する私の新たな不信感を抱いた」と断じ、反対を示唆した。

 地元フランスにとっては、これ以上ない舞台が整い最高の形で幕を閉じた。テレビ中継で解説を務めていた元世界柔道100キロ級金メダリストの穴井隆将氏は、ルーレットでリネールが登場したことに「あそこで90超になるかな…何でそこになるかな」と思わず本音を漏らす場面も。「やっぱり彼は、そういうものを持ってるんですかね」と、絶対王者の引きの強さに脱帽した。

構成●THE DIGEST編集部

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