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レスリング須﨑優衣を撃破したインド選手が体重超過での失格処分を不服→銀メダル求めてCAS提訴に母国レジェンドは「不屈の決意」と支持【パリ五輪】

THE DIGEST編集部

2024.08.10

須﨑(赤)を初戦で破ったビネシュ(青)だが、決勝を前に体重超過により失格処分。その処分を不服とし、CASに提訴した。(C) Getty Images

 物議を醸した体重超過の失格騒動が急展開を迎えている。

 現地8月9日、パリ五輪のレスリング女子フリースタイル50キロ級で、決勝の当日計量で体重超過により失格となったビネシュ・ビネシュ(インド)が失格処分を不服とし、銀メダルを求めてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した。

 事の発端は絶対女王を撃破した大金星から始まった。ビネシュは1回戦で五輪連覇を狙う日本の須﨑優衣を破る番狂わせを起こした。その後も順調に勝ち上がり、インドの女性レスラー史上初めてファイナルまで駒を進めた。だが、決勝が行なわれる朝の計量で体重超過が発覚。およそ100グラムのオーバーで、まさかの失格を言い渡された。

 母国メディアの報道によると、彼女は準決勝後に水分補給などで体重が増加してしまい、その後はハードなトレーニングやサウナ、さらには血抜きや自分の髪の毛を切るなど、あらゆる手段を尽くしたものの、50キロを下回ることはできなかった。さらに追い打ちをかけるように、過度の脱水状態となり失神。病院へ運ばれた。その後、ビネシュは自身のX(旧ツイッター)を更新。「私は負けてしまいました。ごめんなさい。私の勇気はすっかり折れてしまいました。もうこれ以上の力はありません」と綴り、突然の現役引退を表明。世界に大きな衝撃を与えた。
 
 CASによると当事者のヒアリングが行なわれ、「単独仲裁人の決定は、オリンピック終了までに出される予定」としている。そして、この報道にレスリング界の大物が関心を示している。2012年ロンドン五輪の男子フリースタイル74キロ級金メダリストであるジョーダン・ブローシュ氏は「銀メダルの可能性はまだある」とXに投稿。アメリカ史上最高レスラーの同氏も、他人事ではないと興味深く注視している。

 また、射撃のインド代表として過去オリンピックに5回出場し、2008年北京大会の男子10メートルエアライフルで母国初の個人金メダリストに輝いたアビナフ・ビンドラ氏は「親愛なるビネシュよ、インドと国民はあなたの不屈の決意を称えている。マットの上でも外でも、あなたはファイターだ」と発表。ビネシュの行動を支持したレジェンドは、「すべての勝利が同じように見えるわけではない。あなたは真のファイターの精神を体現している。世界は君がチャンピオンであることを知ることになる」とエールを送っている。

 すでに50キロ級の銀メダルはキューバ選手に授与されているが、ビネシュは自分にも銀メダルを与えるよう求めている。初戦敗退となったが、思わぬ形で意地の銅メダルを獲得した須﨑にとっても、気が気でないかもしれない。

構成●THE DIGEST編集部

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