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パリは28年ロス五輪に「とても高いハードルを設定した」と指摘する声。『美しいロケーション+仮設スタンド』実現に32年開催都市は悲鳴「不可能だ」

THE DIGEST編集部

2024.08.14

17日間に渡って行なわれたパリ五輪は閉会式を迎えた。(C)Getty Images

 現地8月11日、パリ五輪は17日間の競技日程を終え幕を閉じた。海外メディアからは「パリ大会はレガシーという観点から、新型コロナウイルスの影響を受けた2021年の東京大会を経て、オリンピックが明らかに復活したことを確認できた」と語っている。

 国際オリンピック委員会(IOC)のマーケティング責任者だったマイケル・ペイン氏は「この大会は、歴史に残る偉大なオリンピックのひとつとして語り継がれるだろう」と称賛。エッフェル塔でのビーチバレーから、馬術競技が実施されたヴェルサイユ宮殿の優雅な環境、フェンシングやテコンドーが開催されたグラン・パレの壮麗さまで、「パリ大会はまさに『光の都』への観光ガイドだった。パリの街が巨大なオリンピック会場となり、その素晴らしい象徴的な建物を背景にした演出は、世界中のテレビ視聴率に大きな影響を与えた」と付け加え、高く評価した。

 一方で、別の幹部は「パリは28年の開催地であるロサンゼルスに、非常に高いハードルを設定した」と考えているようだ。「パリから学んだことがひとつあるとすれば、それは素晴らしいロケーションに仮設会場を使用したことだ。今後の開催地は、常設スタジアムを新しく建設せず、美しい場所に仮設スタンドを設置する際のテンプレートとして活用すべき」と主張。パリのランドマークと自然の美しさを利用した今大会が、オリンピックの招致都市にとって大きな転機になると論じている。
 
 だが、この考えに異論を唱えているのが32年の開催都市だ。オーストラリアのトップニュースサイト『News.com.au』は「将来のオリンピック開催都市は、パリ五輪の最大のレガシーから教訓を学ぶよう促されている。しかし、ブリスベンでは不可能だ」と強く警告している。

 同メディアは「クイーンズランド州の海岸と象徴的なビーチは、サーフィン、セーリング、ビーチバレーなどのイベントをするには素晴らしい背景を提供すると思うが、ほとんどのスポーツには世界的に有名なランドマークが乏しい」と言及。「市庁舎前でフェンシングをやっても、それほど派手には見えない。ブリスベンはパリに追随するよりも、ブリスベンらしくある方が良いだろう」と、模倣はしない慎重な姿勢を示した。

 加えて、「パリは完璧ではなかった」と同メディアはチクリ。「セーヌ川の水質を巡る論争が続いているにもかかわらず、開会式やトライアスロン競技を強行開催した。7月26日のセーヌ川は激しい雨のなか、世界中の視聴者の前で物議を醸す開会式が行なわれた」と大会運営を非難。さらに大会組織委員会などが「セーヌ川をパリ五輪のレガシーに」と標榜し、市内に下水流入防止の巨大地下水層を建設するなど約2000億円もかけて水質浄化を進めたが、依然として汚染問題に悩まされている点を鋭く指摘している。

 コロナ禍の開催で五輪の価値が問われた東京大会から3年。史上初のスタジアム外での開会式など、100年ぶりにパリで開催されたオリンピックは既存の施設や仮設の競技場が全体の95%を占め、世界的な観光名所を競技会場にする試みは一定の収穫を得た。だが、フランスらしい創造性を強く打ち出したものの、課題が浮き彫りになった一面があることも見過ごせない事実である。

構成●THE DIGEST編集部

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