異例の順位変更に苦言を呈している。
去る8月10日、国際体操連盟(FIG)はパリ五輪体操女子の種目別ゆか決勝で4位だったアナ・バルボス(ルーマニア)が3位に繰り上がると発表。ルーマニア体操連盟からの訴えを受けたスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定を受け入れた形だ。その一方で、表彰台に上がった米国代表のジョーダン・チャイルズの銅メダルは取り消しとなった。
事の発端は、技の難易度に関する採点の見直しから始まった。8月5日に実施された種目別ゆか決勝で、チャイルズの得点は当初13.666点と表示。表彰台には一歩届かず、17歳のルーマニア人選手は歓喜の雄叫びを上げた。だがこの直後、採点を不服とした米国チームが審判に見直しを求めたところ、なんと抗議が認められてチャイルズの得点は13.766点に変更。13.700点のバルボズを僅かに上回り、逆転で銅メダルを掴み取った。
しかし、五輪閉幕を目前に事態は急展開。ルーマニア体操連盟の提訴を受けたCASが、チャイルズの得点を修正前に戻す裁定を発表した。米国チームの抗議は得点掲示から1分4秒後で、FIGが定める1分の制限時間を「4秒」超えていたと結論付けた。ゆえに、チャイルズの順位は5位に下がった。
この裁定に納得がいかない米国体操連盟は「抗議は47秒後だった」と反論。証拠の映像とともにCASに訴えたものの、「裁定の見直しは行なわない」と表明した。これを受け、米連盟側はスイス連邦裁に上訴する意向を示すなど、銅メダル論争は泥沼化している。
世界的な論争に発展しているこの問題に心を痛めているのは、当事者だけではない。種目別ゆかで金メダルに輝いたレベッカ・アンドラーデ(ブラジル)は米スポーツメディア『Essentially Sports』に、この騒動について「本当にめちゃくちゃよ」と嘆いている。
同選手は「どんな結末になるかは分からないけど、彼女たちは控訴を求めたから、起こっていることをすべて見直すことができるわ。でも、FIGがこれをどう解決する気なのかは本当に分からない」と私見を述べ、チャイルズから銅メダル剥奪を下したFIGにいささか不満を示した。
というのも、アンドラーデにとって勝利の瞬間以上のものが忘れられない光景として目に焼き付いている。表彰台に立つ直前、銀メダルのシモーネ・バイルズ(米国)と銅メダルのチャイルズは彼女を称え、2人ともひれ伏すようなポーズを取った。屈みこんで両手を伸ばし、真ん中に上がる女王を崇めるようなポーズで祝福した。アンドラーデは「センセーショナルだったわ。私にとっても特別で重要な瞬間でした」と振り返っている。
しかも、男女通じてオリンピック史上初めて黒人選手が体操の表彰台を独占した歴史的快挙でもあった。「私たちにとって、3人の黒人女性が多くのことを代表していた。それはとても特別なことで、歴史的なことで、今までになかったことでしたから。だから、私だけのためではなく、すべての少女たち、女性たちが可能であること。それが起こりうること、私たちがそこにいる資格があることを示すため懸命に戦ったすべての人たちのために、お辞儀をしたのだと思います」と五輪女王は付け加えた。
この表彰式の場面は五輪公式のX(旧ツイッター)にも取り上げられ、歴史的瞬間の写真として投稿された。珠玉のカットは「パリ五輪最高の写真」候補にも挙がっていたが、もう幻となってしまった。英紙『Daily Mail』によると、母国で銅メダルを受け取ったバルボスはメダルを巡る論争について「悲しむべきこと」と評しており、「今後オリンピックの審判やスタッフがきちんと仕事をすることを期待しています」と語っている。
そして、メダルを剝奪されたチャイルズについては「メダルをもらったとしても、私は彼女のことを考えています」と複雑な胸中を抱いている。
構成●THE DIGEST編集部
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去る8月10日、国際体操連盟(FIG)はパリ五輪体操女子の種目別ゆか決勝で4位だったアナ・バルボス(ルーマニア)が3位に繰り上がると発表。ルーマニア体操連盟からの訴えを受けたスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定を受け入れた形だ。その一方で、表彰台に上がった米国代表のジョーダン・チャイルズの銅メダルは取り消しとなった。
事の発端は、技の難易度に関する採点の見直しから始まった。8月5日に実施された種目別ゆか決勝で、チャイルズの得点は当初13.666点と表示。表彰台には一歩届かず、17歳のルーマニア人選手は歓喜の雄叫びを上げた。だがこの直後、採点を不服とした米国チームが審判に見直しを求めたところ、なんと抗議が認められてチャイルズの得点は13.766点に変更。13.700点のバルボズを僅かに上回り、逆転で銅メダルを掴み取った。
しかし、五輪閉幕を目前に事態は急展開。ルーマニア体操連盟の提訴を受けたCASが、チャイルズの得点を修正前に戻す裁定を発表した。米国チームの抗議は得点掲示から1分4秒後で、FIGが定める1分の制限時間を「4秒」超えていたと結論付けた。ゆえに、チャイルズの順位は5位に下がった。
この裁定に納得がいかない米国体操連盟は「抗議は47秒後だった」と反論。証拠の映像とともにCASに訴えたものの、「裁定の見直しは行なわない」と表明した。これを受け、米連盟側はスイス連邦裁に上訴する意向を示すなど、銅メダル論争は泥沼化している。
世界的な論争に発展しているこの問題に心を痛めているのは、当事者だけではない。種目別ゆかで金メダルに輝いたレベッカ・アンドラーデ(ブラジル)は米スポーツメディア『Essentially Sports』に、この騒動について「本当にめちゃくちゃよ」と嘆いている。
同選手は「どんな結末になるかは分からないけど、彼女たちは控訴を求めたから、起こっていることをすべて見直すことができるわ。でも、FIGがこれをどう解決する気なのかは本当に分からない」と私見を述べ、チャイルズから銅メダル剥奪を下したFIGにいささか不満を示した。
というのも、アンドラーデにとって勝利の瞬間以上のものが忘れられない光景として目に焼き付いている。表彰台に立つ直前、銀メダルのシモーネ・バイルズ(米国)と銅メダルのチャイルズは彼女を称え、2人ともひれ伏すようなポーズを取った。屈みこんで両手を伸ばし、真ん中に上がる女王を崇めるようなポーズで祝福した。アンドラーデは「センセーショナルだったわ。私にとっても特別で重要な瞬間でした」と振り返っている。
しかも、男女通じてオリンピック史上初めて黒人選手が体操の表彰台を独占した歴史的快挙でもあった。「私たちにとって、3人の黒人女性が多くのことを代表していた。それはとても特別なことで、歴史的なことで、今までになかったことでしたから。だから、私だけのためではなく、すべての少女たち、女性たちが可能であること。それが起こりうること、私たちがそこにいる資格があることを示すため懸命に戦ったすべての人たちのために、お辞儀をしたのだと思います」と五輪女王は付け加えた。
この表彰式の場面は五輪公式のX(旧ツイッター)にも取り上げられ、歴史的瞬間の写真として投稿された。珠玉のカットは「パリ五輪最高の写真」候補にも挙がっていたが、もう幻となってしまった。英紙『Daily Mail』によると、母国で銅メダルを受け取ったバルボスはメダルを巡る論争について「悲しむべきこと」と評しており、「今後オリンピックの審判やスタッフがきちんと仕事をすることを期待しています」と語っている。
そして、メダルを剝奪されたチャイルズについては「メダルをもらったとしても、私は彼女のことを考えています」と複雑な胸中を抱いている。
構成●THE DIGEST編集部
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