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格闘技・プロレス

「スターダムをメチャクチャにしてやるからな」に込められた意味… ヒールとなった上谷沙弥が2024最終戦で新たな団体トップに君臨するまで

橋本宗洋

2025.01.01

ヒールとなった上谷がスターダムの新たなトップに。写真:橋本宗洋

ヒールとなった上谷がスターダムの新たなトップに。写真:橋本宗洋

 2024年のスターダムは、ヒールが締めた。年内最終戦となったビッグマッチ、両国国技館大会。そのメインイベントは、王者・中野たむに上谷沙弥が挑むワールド・オブ・スターダム選手権試合だった。

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 2023年、負傷により“赤いベルト”ワールド王座を返上したたむ。しかし復帰するとタイトル奪還に成功した。舞華、鈴季すずと欠場期間に闘えなかった選手との防衛戦にも勝利。そこに立ちはだかったのが上谷だった。

 上谷はアイドル志望から、たむに誘われてプロレスラーに。デビュー当時から注目され、“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムの最多防衛記録も樹立している。

 ベビーフェイスとして活躍してきた上谷だったが、昨年7月の札幌大会で誰もが予想しない裏切りに走る。舞華と刀羅ナツコのタイトルマッチ。舞華のセコンドだったはずだが、ナツコに加勢した上谷は、そのままナツコたち大江戸隊と新ユニットH.A.T.E.を結成する。

 コスチュームは黒ずくめ、反則攻撃も辞さないファイトはまさに“大変貌”だった。そのイメチェンが大きなインパクトをもたらしているのは間違いない。ファンはいつの間にか上谷を“沙弥様”と呼ぶようになっていた。ちなみに上谷はファンを“しもべ”と呼ぶ。

 一方で、上谷のキャリアには悲劇の要素があることも見逃せない。

 長く所属したユニットQueen's Quest(QQ)のリーダーに就任するも、大江戸隊との闘いの中でメンバーが自分ひとりに。常にプレッシャーに苛まれてきた。またファンイベントで観客に暴言を吐かれるという“事件”も。その際にぶつけられた「今日は泣かせにきた」という言葉を、上谷は舞華に使っている。

 上谷にとってヒールは反則をするかどうかというレベルのものではないのだ。追い込まれに追い込まれ、切羽詰まったところで彼女はヒールとして爆発した。

 たむ戦での闘いぶりも堂々としたもの。入場ゲートを使ってたむを吊るし“絞首刑”にすると、ゲート上から、たむにダイブ。たむは「上谷、来い!」とこれを受け止めた。

 23年夏のシングルリーグ戦、上谷は照明用のヤグラからダイブし、ヒジを負傷。長期欠場を経験している。その時の相手がたむだった。今回のタイトル挑戦は、この試合での恨みから始まっているそうだ。

 その思いを知っているから、たむはゲート上から飛んだ上谷を受け止めた。かつて上谷から“師匠”と呼ばれたたむ。試合には“勝つか負けるか”以上の思いを注ぎ込んでいたと言っていい。
 
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