来年１月４日（会場はまだ未定だが東京ドームが有力）での引退を表明している新日本プロレスの棚橋弘至社長のカウントダウンが、1.4東京ドーム大会から幕を開けた。初戦の相手は髪の毛を切られるなど遺恨が深まっていたEVIL。棚橋はEVILの挑発に乗ってしまい、この試合に引退を懸けてしまった。

　ランバージャックデスマッチルールとあって、場外に出ればEVIL率いるH.O.T勢が袋叩きに合うも、新日本本隊も矢野通（CHAOS）、ボルチン・オレッグ、マスター・ワト、タイガーマスクをセコンドに待機させて、ボルチンは期待以上の動きでH.O.Tを分断させる。しかしディック東郷の介入は最後まで止まず、棚橋は苦戦するが、EVILが決まってしまった！　と思ったその時、ガッチリと首固めで丸め込み電光石火のカウント３。棚橋がカウントダウン初戦を勝利で飾っている。

　もちろん引退も回避されたわけだが、負けた感覚のないEVILやH.O.T勢は試合後も棚橋を襲い続けると、１人の男がリングへ。今はAEWに所属している棚橋と同期の柴田勝頼だ。柴田はH.O.Tを排除すると、「棚橋くん、もし疲れてなければ、明日試合しませんか？」とサプライズ。棚橋は「柴田ー！オレは、疲れたことがないので、やりましょう！」と呼応したが、バックステージで棚橋は「柴田さんが日本で試合をするには会社で考えないといけない」と話しており、結果的に今回は５分１本勝負のエキシビジョンマッチとなった。時間もないことから２人は激しいチョップ合戦だけで５分間叩き合った。
  　試合後、棚橋は「５分じゃ短いね。ただ、柴田選手と25年前、同じ日にデビューして、若手の頃、何度もシングルマッチがあったり、そしてまた今回、こうして１対１で向かい合えた。向かい合えたって言うこと自体が、今の状況を考えると特別なことだと思いますけど、見て、これ（と、チョップ合戦でドス黒くなった胸元を示す）。火ぃついたよ。ネクスト、期待したいね。ホントに……やっぱり、僕のレスラー人生の節目で、大きな影響を、時に同期、時にライバル、時に外敵、そして一緒にこれからも闘っていけると思った矢先のアクシデントがあって、（言葉に詰まる）プロレスラー、長くやってるとね、いろんなものを犠牲にしないといけない時があったり、身体のダメージもあるし、ただ、それ以上にファンの皆さんの応援や、こうして、もうないだろうと（涙声に）思っていた試合ができると、結果としてね、レスラーをずっと続けてこれて、凄くよかったです」と感無量の様子だった。柴田は「アメリカでの再試合」を熱望しており、タッグ結成にも含みを持たせていることから、この先も同じリングに立つ日がまた来るかもしれない。

　翌６日の東京・大田区総合体育館大会では、デビュー戦の相手だった真壁刀義とタッグを結成。EVILを欠いたH.O.Tに勝利を収めると、バックステージで真壁は「俺は言いてえことがあるんだよ、棚橋さんよぉ！　お前、これで引退すんだろ？　それで満足か？　何かやってねえことあんだろ？　なぁ、やってねえことが１個あんだろ？　何だと思う？」と問うと、棚橋は「真壁さんとのシングルマッチです」とキッパリ。真壁は「オイ、テメーら聞いたな？　社長が言ってんだ、間違いねえよなあ。俺が言ってんじゃねえ、社長が言ってんだからよぉ、間違いねえよなあ。おう、これは俺がずっと思ってることだったんだ。棚橋が俺より先に引退する？　クソ食らえだ、そんなもんはよぉ。いいか、今、『YES』って言ったからな。俺との闘いだ。いつになるかわからねえ。ただ俺と棚橋の、デビュー戦の再来だよ。あれから全てが始まってんだよ。わかったな、棚橋！」と言って控室へ。棚橋の瞳は潤んでいた。

　棚橋は引退までに全所属選手とのシングルマッチ実現を公言しており、今後も続々と手を挙げる選手が出てくるはずだ。どんなタイミングで誰と対戦するのかも含めて楽しみに待ちたい。なお、1.22東京・後楽園ホール大会では嘉藤匠馬、1.23後楽園大会では村島克哉、2.3後楽園大会では永井大貴といったヤングライオンとのシングルマッチが決定。真壁とは2.11大阪府立体育会館第１競技場での対戦が発表されている。

取材・文⚫︎どら増田

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