専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
フィギュア

フィギュア、来シーズンのルール変更ーー大技ジャンプ3種類の基礎点同点となる採点改定が及ぼす影響

辛仁夏

2020.05.27

ルッツが苦手でフリップが得意な坂本花織、本田真凜らはこの変更により恩恵を受ける可能性があるが、ロシア3人娘と紀平の強さは揺るぎないだろう。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

ルッツが苦手でフリップが得意な坂本花織、本田真凜らはこの変更により恩恵を受ける可能性があるが、ロシア3人娘と紀平の強さは揺るぎないだろう。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 ただ、懸念材料が1つある。それは3回転ルッツの得点が減少してフリップと同じ得点になったことだ。ご存じの通り、6種類のジャンプ(トゥループ、サルコー、ループ、フリップ、ルッツ、アクセル)は踏み切り方と跳び方が違う。

一番難しいと言われているのが前向きに踏み切って半回転多くなるアクセルで、その次に難しいのが、左足で踏み切る時にアウトエッジを使って、回転方向と逆向きに体をひねりながら跳び上がるルッツと言われている。このルッツジャンプを正確に跳ぶ選手はそれほど多くなく、近年は3回転ルッツを敬遠する女子選手が目立っていた。ルッツと申告しながら、フリップとルッツの中間のような「フリッツ」や、フラット(エッジがインでもアウトでもない)状態になっている選手も少なくなかった。さらには、アウトエッジでクリアに踏み切っていないルッツに不正エッジの「e」マークや「!」マークをつけて「なんちゃってルッツ」と見なすルールにしたことも悪影響を及ぼしていた。
 
 これらの点を踏まえると、3回転のルッツとフリップが同点になったことにより、来季の女子においては、ジャンプ構成や戦い方に大きな変化が起こることは間違いない。もしかしたら、ルッツを跳ばなくなる女子選手が続出して、アクセルとルッツを跳ばない4種類の3回転で勝負する選手たちが大勢を占める可能性も出てきた。

 3回転アクセルや4回転を跳ぶトップ選手たちに、これらの大技を跳ばない選手たちが対抗できるようにして、女子の戦いに面白さを生み出すためには、3回転ルッツの得点を減らすのではなく、むしろ正確にアウトエッジで踏み切った美しい3回転ルッツにはこれまでの5.90点ではなく、3回転アクセルの8.00点に近づける得点増にするべきだったのではないだろうか。種類が違い、難易度の違うジャンプの得点を同一にした場合、どちらか一方のジャンプ(本来、難しいとされた)の種類が淘汰されるかもしれないからだ。

 女子ではルッツが苦手でフリップが得意な選手(坂本花織、本田真凜、メドベージェワ)が恩恵を受けて、勝負どころで優位に立てる可能性が高くなりそうだが、3回転アクセルと4回転を跳ぶロシア勢と紀平梨花の有利さは依然として変わらないはずだ。

文●辛仁夏 YINHA SYNN
1990年代に新聞記者となり、2000年代からフリーランス記者として取材活動を始め、現在に至る。フィギュアスケート、テニス、体操などのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材する。

【PHOTO】日本女子フィギュアの新エース!笑顔がキュートな紀平梨花の厳選フォト!

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号