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ラグビー

感染症との闘いでもあったリーグワン初年度。稲垣啓太と現役オールブラックスの言葉から読み解く、日本ラグビーの「進化の可能性」

吉田治良

2022.05.30

3本のPGを成功させたマッケンジーだが、一歩及ばなかった。(C) Getty Images

3本のPGを成功させたマッケンジーだが、一歩及ばなかった。(C) Getty Images

 では、肝心のプレーレベルは、リーグワン創設で少しでも向上したのだろうか。16チーム構成だったトップリーグに対して、リーグワンの最上位カテゴリーであるディビジョン1を12チーム構成としたのは、拮抗した試合を増やし、日本ラグビーのクオリティを世界水準に近づけるためだった。

 その世界水準を知る「リーグワン初代得点王」マッケンジーは、こんなコメントを残し、日本を去る。

「スピードやラックからの速い展開もそうですが、何より朝から晩までハードワークするところに、日本人選手から見習うべき点がありました。ただ、(東京SGがこうしたビッグゲームで)勝つためには、少ないチャンスをいかに得点に結びつけるか、という部分をもっと突き詰めていかなくてはなりません」
 
 リーグの形式が変わったからと言って、一朝一夕に技術レベルが上がるわけではない。ただ、マッケンジーのようなワールドクラスを積極的に招き入れることで、多くの日本人選手が小さくない刺激を受けたのは確かだ。日本代表の稲垣でさえ、そうなのだろう。

「前の代表活動中から、自分のタックルに魅力を感じないというか、あまり効果的ではないなと思い始めていたので、どうすればいいかとずっと考えていました。相手の球出しのタイミングや立ち位置を読むなど、タックルに入るまでのプロセスを見つめ直しましたが、結果として今日は何本か効果的なものがありましたね」

 ホームタウン制の定着も含め、まだまだ取り組むべき課題は少なくない。それでも来季、2年目のリーグワン、さらには来年のフランス・ワールドカップに向けて、日本ラグビーが困難の中で意義深い一歩を踏み出したことだけは間違いない。稲垣はこう言った。

「ラグビーを通して、自分なりのメッセージは伝えられたと思うし、少しでも周りにそれを感じてもらうことに、大きな価値があると思います」

 この日、国立に足を運んだ3万3604人の観衆の中の、果たしてどれだけの人が、ピッチ上の選手たちからメッセージを受け取っただろう。その分母を、試行錯誤しながら、少しずつでも大きくしていくことが、日本ラグビーの進化と発展につながっていくはずだ。

取材・文●吉田治良
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