角田が見たのは、2021年のF１第11戦のハンガリーGPで、終盤にルイス・ハミルトン（メルセデス）に迫られた当時アルピーヌのアロンソ（現アストンマーティン）が、巧みなドライビングで10周にわたって７度のワールドチャンピオンを抑え込んだ伝説のバトルだ。当時40歳のスペイン人ドライバーはドライバー・オブ・ザ・デイに選出され、一方のハミルトンはここで手間取ったことが響き、アロンソのチームメイトであるオコンの初優勝を許してしまった（結果的には８度目の年間優勝を逃す原因のひとつにもなっている）。
 
　アロンソいわく「ルイスには2.5秒のアドバンテージがあった」というほどの車の性能差がありながら、テクニックで長くポジションをキープした様は、今季の角田のパフォーマンスに共通するものがある。尊敬するドライバーの技にインスパイアされた22歳のドライバーが、同じような芸当をやってのけるのは、やはり角田の才能の高さゆえのものだろう。

構成●THE DIGEST編集部
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