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ラグビー

「アルゼンチンの強さ、巧さ、重さも消せる」なぜ日本のスクラムは世界の重量FWも動かせないのか?【ラグビーW杯】

向風見也

2023.10.07

 世紀の大一番を間近に控える。目下、加盟する予選プールDから決勝トーナメントに行ける椅子は残り1枠。2大会連続でその切符が欲しい日本代表は、10月8日、現在2位のアルゼンチン代表戦に挑む。

 体勢を崩されても必死に足をかくのが、アルゼンチン代表のスクラムの特徴だ。長谷川は向こうの出場メンバーの特徴、レフリーの笛の傾向を踏まえ、微調整を重ねる。
 
「アルゼンチン代表の強さ、巧さ、重さは、いまの日本代表なら消せる」

 地道に積み重ねてきた。

 2017年からの2年間は、日本代表の兄弟チームにあたるサンウルブズのアシスタントコーチも兼務。参戦していた国際リーグのスーパーラグビーで、自らの理論を通用させるべく試行錯誤した。

 初見のレフリーの癖や海外のぬかるんだ芝に対応しきれず、苦しむこともあった。研究と反復練習の甲斐あって安定化に成功しても、それこそ動かない状態とあってファンに称賛されづらかった。脚光を浴びるには、2019年の日本大会でアイルランド代表を押し返すまで待たねばならなかった。

 苦労の多かった時期には、単独取材の依頼へ「ここで話をしたところで、誰が読むんですか」と首をかしげたこともあった。申し込んだ記者に「私の友達が読みたいと言っていますので、なんとか」と説得され、口を開いたものだ。

 もっとも結果が出る前から、選手たちは「慎さんのスクラム」を信じていた。

 長谷川の知識、情熱が、出会った若者を夢中にさせてきたからだろう。

 初めて顔を合わせた海外出身選手に「私はスクラムが大好きです」と日本語で唱和させ、「外国の人って、漢字が好きでしょう」と姿勢作りのキーワードに「丹田」を導入した指導者が、他にいるだろうか。

 長谷川は、フランス大会限りで退任する。主力格である左プロップの稲垣啓太は、こう感謝する。

「一人ひとりの役割を明確にしたスクラムを、8年間かけて構築してくれました。(アルゼンチン代表戦でも)一人ひとりの役割を大切にして、ディテールを突き詰めたスクラムを発揮したいと思っています」

 大勝負の2日前。日本代表の選手は、決戦の会場であるスタッド・ド・ラ・ボージョワールに足を踏み入れた。事前視察だ。

 フォワードはスパイクを履き、スクラムの形を確認した。確認を終えれば円陣を組んだ。中央で訓示する長谷川は、穏やかな笑顔を浮かべていた。

 準備はできた。

 もう、何をされても動かない。

取材・文●向風見也
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