大谷とラームの相違点について、バルセロナの大手スポーツ紙『SPORT』のコラムで触れたのが、ジョアン・カニェテ・ベイル氏だ。次のように綴っている。

「大谷はスポーツ面でのプロジェクトを重視してドジャースと契約した。契約金の大半を後払いにしたことが何よりの証拠だろう。一方で我が国の英雄ラームは、サウジアラビアの政治的・経済的なプロジェクトを念頭に置いてLIV入りを決断した。カリム・ベンゼマやネイマールなど、サウジアラビア・リーグのクラブと契約したフットボーラーと同じ流れだ」
  「確かに、LIVには一握りの一流ゴルファーが参戦しており、そうした選手たちが競い合う試合が、質の高いものであることは間違いない。しかし、このLIVはスポーツを第一に考えられたプロジェクトではない。立ち上げに至った動機は政治的なもので、サウジアラビアのイメージ＆経営多角化戦略の一環として位置づけられている。同じく商業主義が進んでいるとはいえ、ドジャースはまだベースボールをプレーしつづけており、アメリカ人が言うところのワールドチャンピオンを目指している。大谷と契約したドジャースは、投資を回収するために大谷にホームランを期待する。しかしLIVの場合、関係者がラームに期待しているのがバーディーであるとは、一概に言うことはできない」

　大谷が勝ち取った大型契約は、あくまでベースボールの世界で頂点に立つことを目指した延長線上にあったものだ。一方のラームは、今回の決断でそのアスリートにとって最も大事にしなければならないと本人が強調していたはずの競技面を、二の次に置いた印象を与えた。その点が、スポーツを愛するスペイン人がラームのLIV移籍に失望している所以である。

文●下村正幸

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