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競馬

【名馬列伝】「グレード制導入」の変革時代に現れた”最強マイラー”ニホンピロウイナー。短距離路線の先駆者が新時代の扉を開いた

三好達彦

2024.09.19

 1984年は特にマイルから1200m戦を得意とする短距離馬やマイラーにとって、一気に存在価値が爆上がりするような変化が起こった。JRAが重賞にグレード制を導入し、マイル戦では安田記念(東京)がGⅠに昇格したのに加え、秋には新たなGⅠとしてマイルチャンピオンシップ(京都)が誕生。これまで冷遇されていたマイル~短距離路線を主戦場とする馬たちとオーナー、そのスタッフたちにとってはこの上ない朗報となった。それはニホンピロウイナーにとっても嬉しいニュースであり、路線変更した途端に起こった大変動で、その恩恵をフルに受けるお膳立てができたようなものだった。

 4歳となり、GⅠに昇格した安田記念を春の目標に据えたニホンピロウイナーは、初戦の淀短距離ステークス(OP、京都・芝1200m)を快勝したものの、続くマイラーズカップ(GⅡ、阪神・芝1600m)は不良馬場が堪えて2着に甘んじる。また運が悪いことに、軽度の骨折が判明して安田記念への出走は不可能となってしまった。

 幸いにして患部の治りが早かったため、9月の朝日チャレンジカップ(GⅢ、阪神・芝2000m)で戦列復帰する。このレースを60キロという酷量を背負いながら勝利すると、続くスワンステークス(GⅡ、京都・芝1400m)は2着を7馬身もちぎってレコードタイムで圧勝。絶好調で本番へと向かっていった。
 
 記念すべき第1回マイルチャンピオンシップ(GⅠ、京都・芝1600m)を迎えた。勇躍ニホンピロウイナーが臨むまさに大一番で、彼を迎え撃つのは3月のスプリンターズステークス(当時GⅢ)、京王杯スプリングカップ(GⅡ)、安田記念(GⅠ)と、春季短距離重賞を3連勝して勢いに乗るハッピープログレスである。しかし、前哨戦のスワンステークス(GⅡ)で同馬を大差の3着で降したレース内容が評価されて、ニホンピロウイナーは単勝1番人気となった。

 レースは3番枠から出たニホンピロウイナーがさっとインの3~4番手を奪い、先行・差しの正攻法に出る。一方のハッピープログレスは、いつも通りに後方待機で、今回は向正面で16頭立ての最後方から追走という極端なレース運びをとる。有力2騎が前と後ろで大きく離れ、ここから先にどんな結末が待っているのか。誰もがワクワクするような戦いとなった。

 そして第3コーナーを回ったあたりから、”鬼才”田原成貴が乗るハッピープログレスが馬群の外を通って一気に進出し、直線入り口では早くも先頭に躍り出る。一方、”関西のエース”河内洋が手綱をとるニホンピロウイナーは内ラチ沿いへ進路をとって力強いフットワークで脚を伸ばし、残り100メートル付近で先頭を奪う。そして、再び脚を使ったハッピープログレスが迫ろうとしたが、半馬身差まで詰めるのが精一杯。ニホンピロウイナーの完勝であった。

 そしてこの年も、ニホンピロウイナーは2年連続でJRA賞最優秀スプリンターに輝いた。
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