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競馬

スタニングローズのGⅠ復活制覇の裏で、断然1番人気レガレイラは“消化不良”。波乱演出する不名誉な役割に…【エリザベス女王杯】

三好達彦

2024.11.12

 一昨年の秋華賞(GⅠ)以来、約2年ぶりの勝利で2つ目のビッグタイトルを手に入れたスタニングローズ。長いスランプから立ち直らせた厩舎の力が素晴らしければ、早めの仕掛けで馬を鼓舞しながら、勝利に結びつけた豪胆な騎乗をこともなげに成し遂げたクリスチャン・デムーロ騎手の手綱さばきは、さすがワールドレベルとファンや関係者を唸らせるものだった。所属クラブの規定で、おそらく来年の早い時期に引退するのであろう本馬がこの先どのレースを選択するのかに注目が集まる。

 レガレイラと並ぶ34秒1の上がりタイムで2着に食い込んだラヴェルは、2歳時のアルテミスステークス(GⅢ)で、のちに牝馬三冠を達成するリバティアイランド(4歳/栗東・中内田充正厩舎)を2着に降した経験を持つ隠れた実力馬だ。このレースで手綱をとった川田将雅騎手は、内にレガレイラを閉じ込めながら、自身は直線半ばからしぶとく脚を伸ばしての2着。リーディング上位を占める名手らしい技が彼女のポテンシャルを見事に引き出した。

 重賞未勝利、GⅠ初出走の身でありながら単勝2番人気に推されたホールネスだが、そうしたファンの見立てに応えるように、いったんは苦しくなりながらも、激しい争いのなかで3着を確保したのは立派のひと言。勝ち馬と差があったのは確かだが、まだキャリアは7戦。5歳を迎える来年にはさらなる進化を遂げた姿が見られるはずだ。
 
 一方、大きな人気を背負って5着に敗れたレガレイラの評価は難しい。課題となるスタートは五分に切れたが、そのあとのダッシュは鈍く、中団の後ろ目を追走することになり、ルメール騎手は「いいポジションが取れなかった。スタニングローズの後ろならいい競馬ができたと思うが、スタートは良かったものの、そのあとの走りはいつも通りで、位置が後ろすぎた」と述懐。相変わらずスタートから位置取りまでのプロセスに課題を抱えていることを明かした。

 また、直線でシンティレーションとハーパーの間を強引に割ろうとしたところでも、詳しく見ると、2頭の間が開きそうなタイミングで馬体を滑り込ませようとした瞬間にハーパーが内へ刺さり、結果として両馬に不利を与えるという、いささか不運な面があったのが確認できる。ゆえに、それが過怠金5万円という罰金では上から2番目の処分となったことを表していると思われる。

 このレースでも、これだけのトラブルに関与しながら2着のラヴェルと同じ上がりタイムを叩き出しているように、末脚が一級品であるのは今も間違いない。ただし同時に、レース運びに関する難しさをいまだ残していることも露見してしまった。腕利きの木村調教師がどんな手を打ってくるか、引き続き注目していきたい馬である。

 気の毒としか言いようがなかったのは、直線で二度にわたって大きな不利を受け、10着に敗れたシンティレーションである。競馬に「たら・れば」はないとよく言われるが、まともに走れていれば、少なくとも2着争いには加われていたはず。この一戦だけで見限らず、継続的に追いかけていきたいと感じられた。

取材・文●三好達彦

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