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海外サッカー

サッカー界に革命をもたらした「ボスマン判決」から30年――革新的な変化とともに今なお存在する「継続的な争い」を英紙が検証

THE DIGEST編集部

2025.12.17

ボスマン判決によってクラブ間の格差も、この30年間で拡大している。(C) Getty Images

ボスマン判決によってクラブ間の格差も、この30年間で拡大している。(C) Getty Images

 1995年12月15日に欧州司法裁判所(CJEU)が下したひとつの判決は、サッカーの歴史を大きく変えるものとなった。これは、5年間におよぶ法廷闘争の末に勝利を勝ち取ったベルギー人サッカー選手、ジャン=マルク・ボスマンの名を取って「ボスマン判決」と呼ばれている。
 
 1989-90シーズンを終え、所属していたベルギー国内2部リーグのクラブ、RFCリエージュとの契約が満了を迎えたボスマンは、フランス2部リーグのUSLダンケルクからオファーを受ける。しかし、当時は契約切れとなっても選手が自由に移籍できず、このMF選手の所有権を主張するリエージュが難色を示したために破談、所属クラブがないまま翌シーズンを過ごすことを余儀なくされた。

 ボスマンはリエージュとベルギー・サッカー連盟に対して訴訟を起こして90年11月に本来受け取る分だった賃金の支払いとフランスの3部クラブ、サン・カンタンへの所属を勝ち取ったが、これに満足せず、さらにUEFA(欧州サッカー連盟)を相手取り、契約満了後の自由な移籍、またEUの「労働の自由」をサッカー界にも適用し、圏内の国々の国籍所有者に関しては外国人枠を撤廃することを求めた。

 そして5年後、CJEUの裁判官は「わずか2分」で結審し、彼の訴えを全面的に認めた。英国の日刊紙『The Guardian』は、この革新的な判決を勝ち取ったボスマンのその後については「下り坂だった。(中略)彼は破産し、アルコール依存症の治療を受け、2013年には当時のパートナーに対する暴行で有罪となり、地元のサッカー場の芝刈りを含む社会奉仕命令を科された」と伝えたが、一方で彼がサッカー界にもたらした変化は極めて大きかったとも指摘している。

「彼の名を冠したこの判決が歴史的であったこと、そして30年を経た今、それがスポーツ界に革命をもたらしたことは、疑う余地がない」と綴った同メディアは、ボスマン判決が選手を自由な労働者に変え、クラブとの力関係を逆転させて、移籍やベテラン選手に対する価値観まで変えたと同時に、資金力のあるクラブへの戦力の集中、サッカー界の格差拡大という副作用も生んだと報じた。

 そして、著名なサッカー史研究家デイビッド・ゴールドブラット氏の言葉を引用し、世界のトップレベルのプロリーグでプレーする選手たちの賃金インフレについて、「業界に大量の資金が流れ込んだのは事実だが、選手とその代理人が、プロサッカー全体の売上の70~80%を支配できるようになっているというのは、実に驚くべきことだ。銀行家ですら、そこまで取っていない」と、現状を表現する。
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