ラ・リーガ第17節のセビージャ戦。キリアン・エムバペは、レアル・マドリーでの2025年の公式戦ゴール数を「59」に伸ばした(試合はマドリーが2-0で勝利)。これは、2013年にクリスティアーノ・ロナウドが打ち立てたクラブ年間最多得点記録に並ぶ、驚異的な数字だ。この快挙により、現地では新旧エースを巡る比較論が再燃している。
両者のプレースタイルは、似ているようで本質的に異なる。ドリブルを武器とするウイングから、キャリアを重ねるごとに「究極の点取り屋」へと変貌を遂げたロナウドに対して、エムバペは、バルセロナの元スカウト、ボージャン・クルキッチ・シニア氏曰く「9番をこなすウインガー」のカテゴリーに分類されるようだ。つまり、マーカス・ラッシュフォードやフェラン・トーレスらと同じ括りである。
ロナウドは2025年初頭、後継者への期待を込めてこう提言していた。「彼はまだセンターフォワードとしての動きを知らない。能力の欠如ではなく、適正ポジションではないのだ。もし俺が今マドリーにいたら、彼に“9番”のプレーを伝授するだろう。俺自身、ウイングからスタートし、徐々にフォワードの役割を自分のものにしていった。俺は型にハマったフォワードではないし、彼にもそうなってほしくない。俺が今体現しているような“クリスティアーノ流のストライカー”を目指すべきだ」
そんな2人を強く結びつけるのは、異次元の得点力と勝利への渇望だ。マドリーOBのイバン・サモラーノ氏は、「タイプこそ異なるが、2人を繋ぐのはスタッツが証明する凄まじい決定力と、飽くなき向上心だ。今のエムバペには、25、26歳当時のクリスティアーノの残像が見える」と絶賛する。
2人の得点数が比較されるのは、今回に限った話ではない。ちょうど1年前にも、スペイン紙『AS』でマドリー加入1年目のクリスマス時点での得点数が、ロナウドの「13」に対してエムバペは「14」であったと取り上げられていたし、これからもそれは続いていくだろう。
しかし、エムバペが歩まなければならない道のりは限りなく険しい。クラブの黄金期を知るOBのグティ氏は、「ロナウドを超える者はいない。彼は圧倒的な継続性によって一時代を築いた。10試合で活躍しても、肝心な局面で沈黙しては意味がないんだ」と釘を刺す。前指揮官のカルロ・アンチェロッティも、昨シーズンの時点でこう強調していた。 「エムバペは極めて高いクオリティーを備えており、クリスティアーノと肩を並べる可能性は秘めている。しかし、クリスティアーノが設定したハードルはあまりに高い。そのレベルに達するにはさらなる研鑽が必要だ」
幼少期、自室の壁をロナウドのポスターで埋め尽くしていたエムバペは、10月のインタビューで自身のアイドルに最大級のリスペクトを示した。「クリスティアーノは常に僕のお手本だった。彼と話す機会に恵まれ、アドバイスをもらったり、助けてもらったりもした。マドリーにおいては、彼がナンバーワンだよ」
そして新エースは、こうも付け加えている。「僕は僕自身の道を歩みたい」憧れの背中を追いかけながら、自分だけの伝説を紡ぎたいのかもしれない。
文●下村正幸
【動画】エムバペがC・ロナウドに並ぶ年間59点目を挙げたセビージャ戦ハイライト
両者のプレースタイルは、似ているようで本質的に異なる。ドリブルを武器とするウイングから、キャリアを重ねるごとに「究極の点取り屋」へと変貌を遂げたロナウドに対して、エムバペは、バルセロナの元スカウト、ボージャン・クルキッチ・シニア氏曰く「9番をこなすウインガー」のカテゴリーに分類されるようだ。つまり、マーカス・ラッシュフォードやフェラン・トーレスらと同じ括りである。
ロナウドは2025年初頭、後継者への期待を込めてこう提言していた。「彼はまだセンターフォワードとしての動きを知らない。能力の欠如ではなく、適正ポジションではないのだ。もし俺が今マドリーにいたら、彼に“9番”のプレーを伝授するだろう。俺自身、ウイングからスタートし、徐々にフォワードの役割を自分のものにしていった。俺は型にハマったフォワードではないし、彼にもそうなってほしくない。俺が今体現しているような“クリスティアーノ流のストライカー”を目指すべきだ」
そんな2人を強く結びつけるのは、異次元の得点力と勝利への渇望だ。マドリーOBのイバン・サモラーノ氏は、「タイプこそ異なるが、2人を繋ぐのはスタッツが証明する凄まじい決定力と、飽くなき向上心だ。今のエムバペには、25、26歳当時のクリスティアーノの残像が見える」と絶賛する。
2人の得点数が比較されるのは、今回に限った話ではない。ちょうど1年前にも、スペイン紙『AS』でマドリー加入1年目のクリスマス時点での得点数が、ロナウドの「13」に対してエムバペは「14」であったと取り上げられていたし、これからもそれは続いていくだろう。
しかし、エムバペが歩まなければならない道のりは限りなく険しい。クラブの黄金期を知るOBのグティ氏は、「ロナウドを超える者はいない。彼は圧倒的な継続性によって一時代を築いた。10試合で活躍しても、肝心な局面で沈黙しては意味がないんだ」と釘を刺す。前指揮官のカルロ・アンチェロッティも、昨シーズンの時点でこう強調していた。 「エムバペは極めて高いクオリティーを備えており、クリスティアーノと肩を並べる可能性は秘めている。しかし、クリスティアーノが設定したハードルはあまりに高い。そのレベルに達するにはさらなる研鑽が必要だ」
幼少期、自室の壁をロナウドのポスターで埋め尽くしていたエムバペは、10月のインタビューで自身のアイドルに最大級のリスペクトを示した。「クリスティアーノは常に僕のお手本だった。彼と話す機会に恵まれ、アドバイスをもらったり、助けてもらったりもした。マドリーにおいては、彼がナンバーワンだよ」
そして新エースは、こうも付け加えている。「僕は僕自身の道を歩みたい」憧れの背中を追いかけながら、自分だけの伝説を紡ぎたいのかもしれない。
文●下村正幸
【動画】エムバペがC・ロナウドに並ぶ年間59点目を挙げたセビージャ戦ハイライト
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