専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
日本代表

「日本人はおかしい」――ジェフ時代に育成にも響いた指導者・オシムの凄み。日本サッカー界が忘れてはならない姿勢

THE DIGEST編集部

2023.01.04

日本サッカー界の変革をもたらしたオシム。彼は決して放任主義というわけではなかった。(C)Getty Images

日本サッカー界の変革をもたらしたオシム。彼は決して放任主義というわけではなかった。(C)Getty Images

 イビチャ・オシム(故80歳)はジェフ市原(現在のジェフ市原・千葉)にクラブ史上初となるタイトルをもたらし、日本代表監督としても日本サッカー界に様々な変革をもたらした人物だ。

 前回のコラムで「オシムのトレーニングには指導者がコーチングをほとんどしないでもいいようにオーガナイズされたものがあり、選手はそのトレーニングの中で自然と状況を認知して、決断しながらプレーする習慣を身に着けていった」と紹介した。

 では、オシムは選手に対して何も言わないのかというとそんなわけはない。

「皆さんが思っているより、僕は止めている印象かなと思います。全て教えてくれて、提案してくれて、そのうえで『もっと考えろ』みたいなのがあるかなと感覚的にあります」

 そう話すのは元日本代表でジェフ市原時代にオシムのもとで主軸として活躍した羽生直剛だ。
 
 ゲーム形式のトレーニングになり、攻撃方向や役割が明確になったりする練習が入ると、現状をどう切り取って見るのか、その場合にどんな選択肢、可能性があるのかを提示されて、「常にもっと先のことを考えながらプレーしなさい」とよく言われていたという。

「プレーを止めるところも的確だったというのもそうですし、一度止めて、『いまのはこういうのもあっただろう?』『こういうのもあったりして、それならこういうのもあるじゃないのか?』みたいなメッセージがある。かつ『それ以上のことを、お前らもできるからね』みたいに運んでいって、最後は『じゃあ、お前らどうする?』と言われていた印象があります。ゲーム形式だと流してやるっていうのは、とくに最初の頃はなくて、明確に“サッカー”に近づけていくと感じていました」

 当時ジェフ市原の育成部に所属していた池上正にも話を訊いた。彼は時間さえあれば、トップチームの練習に顔を出し、オシムのトレーニングをつぶさに観察し続けていたという。

「オシムさんは私たち指導者に、『サッカーにはセオリーがある。そのセオリーはちゃんと知らないといけない』という話をよくしていました。例えば『FWにボールが入った時に、周囲の選手がこんなところに飛び出すと相手はどうなる?』というのをどんどん聞いていく。

 そしてオシムさんの中にはセオリーがあるから、『ある選手がこう動いたら、ここが空いてくる。だからそこのスペースに取りこんでいく選手が必要だろ?』という解説をたくさんしているのを見ていましたね。まさにその部分が、日本人は今まで学んできてない部分だったと思うんです。

 オシムさんが『右へ動け!って言ったら、日本の選手は全員右に行く。日本人はおかしい』っていう話をしてくれたことがあるんです。ヨーロッパの選手は『俺が右って言っても、どんな時でも右にいった方がいい訳ではないのを知っているから、状況によっては当然左にも行く』って。

 それでも取り組み続けることで、右や左だけではなくて、前にも後ろにも行けるようになってきましたね。そして、セオリーがある中で、自分で考えてそれを上回る動きを見せる選手が出たら、『ブラボー』って言うんです。そういうところがすごいなと思います。自分たちが考え出した動きには『ブラボー』をちゃんと言う」
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号