今シーズンのセリエAは、例年になく意外性に満ちた展開になっている。首位を走っているのはなんとアタランタ(勝点40)。昨シーズンのヨーロッパリーグ(EL)王者で、近年はトップ5に食い込むことも珍しくないとはいえ、第7節から10連勝を飾っての首位は驚きだ。
そのアタランタを2ポイント差で追う2位はナポリ(勝点38)。2年前に圧倒的な強さを見せて優勝しながら、昨シーズンは迷走に迷走を重ねて10位に沈んだチームを、新任のアントニオ・コンテ監督が、リーグ最少失点の堅守をベースにしたたかに勝点をもぎ取る戦闘集団へと見事に立て直した。
例年ならば主役を演じているはずの「ビッグ3」、すなわちユベントス、インテル、ミランのうち、上の2チームと張り合って優勝争いに絡んでいるのは3位のインテル(勝点37)だけ。新監督の下でそれぞれの問題を抱えるユベントスは首位から9ポイント差の6位(勝点31)、ミランは14ポイント差の8位(勝点26)と、不本意な位置に停滞している(インテルとミランは消化試合が1試合少ない)。
それではシーズンのほぼ半分を消化した現時点での「ビッグ3」の戦いぶりを、データも参照しながら振り返ってみよう。
●インテル:3位(勝ち点37=16試合11勝4分け1敗/42得点15失点)
圧倒的な強さで優勝した昨シーズンの戦力をさらに強化したうえ、シモーネ・インザーギ監督体制4年目を迎えて戦術的な完成度も十分であることを考えれば、3位という現状には(上位2チームより消化が1試合少ないとはいえ)やや物足りなさも残る。
ただしそこには、情状酌量の余地も残されている。インザーギ監督は今シーズン、メンバーを固定して戦う傾向が強かったこれまでの采配を見直し、積極的なターンオーバーに取り組んでいるのだ。最終ラインのヤン・ビセック、カルロス・アウグスト、中盤のダビデ・フラッテージ、ピオトル・ジエリンスキら、いわゆる準レギュラークラスの出場時間は、昨シーズンまでと比べて明らかに増えている。
そこに、コンディション維持や怪我の防止を目的とする出場時間や負荷のコントロールという側面だけでなく、陣容全体のポテンシャルを最大限に引き出して、シーズン終盤まで高い競争力を維持するという狙いがあることは、インザーギ監督がこのところ繰り返し口にしている「私のチームには25人のレギュラーがいる」というコメントからも明らかだ。
【動画】インテルの最新試合、コモ戦のハイライト!
戦術的に見ると、最終ラインと中盤の間で頻繁にポジションが入れ替わる流動的なビルドアップ、サイドからの仕掛けで攻撃を加速しクロスを主体に決定機を作り出すラスト30メートルの攻略、コンパクトな5ー3ー2ブロックによるミドルプレスといった大枠は、昨シーズンと変わっていない。
ボール支配率59.8パーセントはリーグ2位、ペナルティーエリアへのパス本数、シュート数、枠内シュート数もすべてリーグ2位という数字が示すように、攻撃のボリュームは申し分ないレベル。41得点は、消化試合が1つ少ないにもかかわらずアタランタを上回ってリーグ1位だ。守備面でも被シュート数がリーグ最少、失点も少ない方から4番目と十分に安定しており、攻守のバランスも高いレベルで確保されている。
序盤戦は、一見するとメンバーを落としたようにも見えるスタメンで臨んだ試合で苦戦や取りこぼしが散見された。ただ、このところは故障者の穴埋めも含め、準レギュラークラスが主役級の活躍を見せる試合も出てきており、チームの総合力は着実に高まってきている。これは後半戦に向けての好材料だ。
大手データ会社『Opta』のAIが、全試合の詳細なパフォーマンスデータに基づいて算出した今シーズンの最終勝点予測は「86.19」。これはアタランタの「81.97」を上回る数字で、優勝確率も67.09パーセントとアタランタの「27.25パーセント」を大幅に上回っている。はたしてAI予想通り、後半戦にスクデット争いの主役に躍り出ることができるか。
文●片野道郎
【記事】『セリエAビッグ3前半戦総括:ユベントス編』エースの決定力の低さが勝ちきれない要因「後半戦はトップ4入り争いが焦点に」【現地発コラム】
【記事】『セリエA“ビッグ3”前半戦総括:ミラン編』期待外れの8位、答えを出せずにいる試行錯誤に「何らかの形で終止符を打つことが必要だ」【現地発コラム】
【記事】「活躍をすぐに期待するのは明らかに過大」ミランの“神童”カマルダ、16歳でCLデビュー&幻ゴールも…「段階を踏んで成長し、1~2年後のブレイクが理想的」【現地発コラム】
そのアタランタを2ポイント差で追う2位はナポリ(勝点38)。2年前に圧倒的な強さを見せて優勝しながら、昨シーズンは迷走に迷走を重ねて10位に沈んだチームを、新任のアントニオ・コンテ監督が、リーグ最少失点の堅守をベースにしたたかに勝点をもぎ取る戦闘集団へと見事に立て直した。
例年ならば主役を演じているはずの「ビッグ3」、すなわちユベントス、インテル、ミランのうち、上の2チームと張り合って優勝争いに絡んでいるのは3位のインテル(勝点37)だけ。新監督の下でそれぞれの問題を抱えるユベントスは首位から9ポイント差の6位(勝点31)、ミランは14ポイント差の8位(勝点26)と、不本意な位置に停滞している(インテルとミランは消化試合が1試合少ない)。
それではシーズンのほぼ半分を消化した現時点での「ビッグ3」の戦いぶりを、データも参照しながら振り返ってみよう。
●インテル:3位(勝ち点37=16試合11勝4分け1敗/42得点15失点)
圧倒的な強さで優勝した昨シーズンの戦力をさらに強化したうえ、シモーネ・インザーギ監督体制4年目を迎えて戦術的な完成度も十分であることを考えれば、3位という現状には(上位2チームより消化が1試合少ないとはいえ)やや物足りなさも残る。
ただしそこには、情状酌量の余地も残されている。インザーギ監督は今シーズン、メンバーを固定して戦う傾向が強かったこれまでの采配を見直し、積極的なターンオーバーに取り組んでいるのだ。最終ラインのヤン・ビセック、カルロス・アウグスト、中盤のダビデ・フラッテージ、ピオトル・ジエリンスキら、いわゆる準レギュラークラスの出場時間は、昨シーズンまでと比べて明らかに増えている。
そこに、コンディション維持や怪我の防止を目的とする出場時間や負荷のコントロールという側面だけでなく、陣容全体のポテンシャルを最大限に引き出して、シーズン終盤まで高い競争力を維持するという狙いがあることは、インザーギ監督がこのところ繰り返し口にしている「私のチームには25人のレギュラーがいる」というコメントからも明らかだ。
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戦術的に見ると、最終ラインと中盤の間で頻繁にポジションが入れ替わる流動的なビルドアップ、サイドからの仕掛けで攻撃を加速しクロスを主体に決定機を作り出すラスト30メートルの攻略、コンパクトな5ー3ー2ブロックによるミドルプレスといった大枠は、昨シーズンと変わっていない。
ボール支配率59.8パーセントはリーグ2位、ペナルティーエリアへのパス本数、シュート数、枠内シュート数もすべてリーグ2位という数字が示すように、攻撃のボリュームは申し分ないレベル。41得点は、消化試合が1つ少ないにもかかわらずアタランタを上回ってリーグ1位だ。守備面でも被シュート数がリーグ最少、失点も少ない方から4番目と十分に安定しており、攻守のバランスも高いレベルで確保されている。
序盤戦は、一見するとメンバーを落としたようにも見えるスタメンで臨んだ試合で苦戦や取りこぼしが散見された。ただ、このところは故障者の穴埋めも含め、準レギュラークラスが主役級の活躍を見せる試合も出てきており、チームの総合力は着実に高まってきている。これは後半戦に向けての好材料だ。
大手データ会社『Opta』のAIが、全試合の詳細なパフォーマンスデータに基づいて算出した今シーズンの最終勝点予測は「86.19」。これはアタランタの「81.97」を上回る数字で、優勝確率も67.09パーセントとアタランタの「27.25パーセント」を大幅に上回っている。はたしてAI予想通り、後半戦にスクデット争いの主役に躍り出ることができるか。
文●片野道郎
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