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『セリエA“ビッグ3”前半戦総括:ミラン編』期待外れの8位、答えを出せずにいる試行錯誤に「何らかの形で終止符を打つことが必要だ」【現地発コラム】

片野道郎

2024.12.26

消化試合がひとつ少ないながら、8位と期待外れの順位にいるミラン。今シーズンから指揮を執るフォンセカ監督の手腕が試されている。(C)Alberto LINGRIA

消化試合がひとつ少ないながら、8位と期待外れの順位にいるミラン。今シーズンから指揮を執るフォンセカ監督の手腕が試されている。(C)Alberto LINGRIA

「ビッグ3」はもちろん、チャンピオンズリーグ(CL)出場権をノルマとする強豪クラブの中でも出遅れが目立つのがミランだ。シーズンが半ばにも達していない現時点で、首位に10ポイント以上離され、CLどころかヨーロッパリーグ(EL)出場権にすら手が届かない8位。しかもチームとしての明確なアイデンティティーをいまだ確立できずにいる点で、期待外れという評価は否めない。

 5年間続いたステーファノ・ピオーリ前監督時代のサッカーが、アグレッシブなマンツーマン守備と縦指向の強いダイレクトアタックを基本に据えたトランジション志向だったのに対し、パウロ・フォンセカ新監督のそれは、ミドルブロックのゾーンディフェンスとボール保持によるゲーム支配を基本に据えたポゼッション志向の強いスタイル。ここまでのもたつきは、この変化をチームに定着させるための試行錯誤の反映と見ることができる。

 フォンセカ監督は、11人全員のハードワークを前提とする守備戦術との相性が悪いラファエウ・レオン、テオ・エルナンデズとの間に問題を抱えるなど、戦術の浸透だけでなくチームマネジメントという側面でも、グループ掌握に時間を要してきた。この2人が抱える守備面での欠落をどうカバーし、たったワンプレーで決定的な違いを作り出すその攻撃力をチームの中で活かすかという問いに、指揮官は今なお最終的な答えを出せずにいる。

 ひとつの答えになりそうだったのは、11月5日のCLレアル・マドリー戦で初めて見せた、本来は運動量豊富なセントラルMFであるユヌス・ムサを右ウイングに起用し、守備の局面では最終ラインまで下げて5バックにするメカニズムだ。

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 4ー2ー3ー1の配置を時計回りに回転させて5ー3ー2に移行するこのやり方は、レオンとテオの守備の負担を軽減しつつ全体の強度を確保する、効果的な解決であるように見えた。チーム全体の重心が下がったのに合わせて、攻撃もロングボールの比率を高めてダイレクト志向を強める方向にシフトしているようだ。

 しかしそれも、肝心のムサが故障離脱したことで一旦棚上げに。指揮官は右ウイングにより攻撃的なチュクウェゼを起用したうえで守備を安定させるため、左SBにテオではなく19歳のアレックス・ヒメネスを起用してバランスを取る対応を選んでいる。

 データ会社『Opta』のAIが算出した予想最終勝点は「64.26」。これはユベントス(69.55)、フィオレンティーナ(65.69)に及ばない7位にあたる数字だ。この予測を覆し、CLは難しいとしてもEL出場権争いに絡んで行くためには、まずこの試行錯誤に何らかの形で終止符を打つことが必要だろう。もしこのままフォンセカ体制が軌道に乗らなければ、シーズン終了時点でプロジェクトそのものを見直さざるをえない可能性もある。

文●片野道郎

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