「２時間41分にわたり、国内で数百万人、日本国内でさらに数千万人が見守る中、５万2883人のファンの前で、大谷翔平は６回を無失点に抑え、10奪三振。その間に３本の本塁打を放ち、その飛距離は合計1342フィートに及んだ。そのうち１本はドジャー・スタジアムを完全に飛び越えた。それは現実ではなく、漫画の中にあるような試合だった」

　現地10月17日、ロサンゼルス・ドジャースの大谷がミルウォーキー・ブルワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ第４戦に先発。６回０／３、100球、被安打２、３四球、10奪三振、無失点と好投を見せ、打者として３本塁打を放って見せた。レギュラーシーズン、ポストシーズンを問わず、同一試合で投手として10奪三振、３本塁打を放ったのは大谷が史上初（MLB公式のサラ・ラングス記者）だという。

　冒頭のように試合を振り返った米放送局『ESPN』のジェフ・パッサン記者は、大谷の前代未聞の活躍に心を打たれたようだ。

「観客は、この試合を見られたことに高揚感を覚えると同時に、二度とこのような試合は見られないと理解して少しがっかりするような夜だった。過去150年間で行われた約25万試合の中でおそらく最も素晴らしい選手個人の活躍。誰もがその虜になったのだ」

　パッサン記者が記した「選手個人」とは、もちろん大谷を指している。「もはや大谷が活躍するのは当然だと思いがちだ。私たちはそんな型にはまった安心感に浸っている――彼は地球上で最高の選手であり、それ以上でも以下でもない。大谷の基準は他者にとっての頂点だ。彼は自分自身とだけ比較される」。

  　勝利投手となった先発が、打者として３本塁打。前代未聞の大活躍をパッサン記者は「大谷の魔法の全貌が解き放たれた瞬間」と表現し、「世界最高のアスリートのひとりで、史上最も才能ある野球選手が計り知れない偉業を成し遂げ、リアルタイムで野球という競技そのものを再定義している。そんな事実を改めて思い起こさせる必要不可欠な出来事だった」と回顧。「たとえ、らしくない不振に陥っていたとしても、大谷はたった１試合で自らを歴史の記録に刻むことができるのだ」と続けた。

「ナ・リーグ優勝決定シリーズ第４戦における大谷の活躍が、“歴代最高の試合ランキング”で何位になのか、今後何年も議論されるだろう。しかし、ドジャースがブルワーズに５対１で勝利した後、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督はフィールドに立って“野球史上最高の夜だ”と言い切った。この主張に異論を唱えた者は、ひとりもいなかった。大谷は攻撃と守備、野球の純粋な才能を完璧なものへ昇華させた唯一の存在だ」

　パッサン記者の賛辞はまた続く。「メジャー史上、１試合で３本塁打を打った選手は503人いて、１試合で10個以上の三振を奪った投手は1550人いる。しかし、その両方を達成した選手は、25年10月17日までいなかった。これが大谷の真髄なのだ。メジャーの８年間で大谷は野球界の常識を変革し、ほかの誰もが到達できない基準を築き上げている」。

　ドジャース加入１年目の2024年に念願の“世界一”になった大谷は、２年目の今年も至高の舞台に立つ。シアトル・マリナーズかトロント・ブルージェイズと対戦するシーズン集大成のワールドシリーズで、どんな活躍を見せてくれるのか。周囲の期待は大きく膨らんでいる。

構成●THE DIGEST編集部

【動画】史上初の“10K＆３本塁打”、47秒のムービーに凝縮！