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二日酔いで完全試合のブレイデンを上回るハチャメチャ男! ドラッグを服用してノーヒッターを達成したドック・エリス

2020.05.08

LSDによる幻覚症状に襲われながらもノーヒッターを達成したエリス。こんな投手はもう二度と現れないだろう(C)Getty Images

LSDによる幻覚症状に襲われながらもノーヒッターを達成したエリス。こんな投手はもう二度と現れないだろう(C)Getty Images

 2010年に完全試合を達成したダレス・ブレイデンが二日酔い状態だったことを告白して話題になっているが、上には上がいる。今からちょうど50年前の1970年、ピッツバーグ・パイレーツのドック・エリスは何とLSDをキメた状態でマウンドに上がり、ノーヒットノーランを達成した(6月12日のサンディエゴ・パドレス戦)。

“アシッド”とも呼ばれるLSDは、アメリカでは当時から違法薬物に指定されていた一方、創造性を高める効果があるとされ、ミュージシャンやアーティストの間で広く服用されていた。

 本人の回想によると、エリスは登板前日にLAの友人宅を訪れて酒とドラッグを嗜み、12日も昼頃に再びアシッドをキメていた。午後2時頃になってようやく自分がその日のナイターの先発投手であることに気づき、あわててサンディエゴへ。球場に到着したのは試合開始1時間半前だったという。
 
 どうにかマウンドに上がったエリスだが、ボールの感触もなければキャッチャーも見えなかった。4回頃になると、リチャード・ニクソン大統領が球審を務めているという幻覚にも襲われた(!)という。実際、エリスはこの試合で9つもの四死球を与えているのだが、それでもノーヒッターを達成してしまったのだから感心するというか呆れるというか……。

 この他にも数々の奇行で知られるエリスだが、ノーヒッター達成の翌年には19勝、メジャー通算でも138勝を挙げるなど実力も一級品だった。それだけでなく、黒人の権利向上運動にも積極的に関わり、その熱心さはあのジャッキー・ロビンソンからも高く評価されていたという(ただし、「余計な一言が多すぎる」とも言われたようだが)。

 晩年はドラッグ中毒に苦しむ囚人たちのカウンセラーなどを務めていたエリス。2008年に肝不全のため63歳で亡くなった。

構成●スラッガー編集部

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