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プロ野球

「反逆者」と呼ばれた男たちが切り拓く日本球界の未来【2】「夢を批判する権利は誰にもない」。吉川峻平が選んだ己の道

氏原英明

2020.05.23

社会人から直接アメリカへ渡った吉川。渡米1年目の昨年は1A+で22試合に投げて防御率3.75という成績だった。(C)Getty Images

社会人から直接アメリカへ渡った吉川。渡米1年目の昨年は1A+で22試合に投げて防御率3.75という成績だった。(C)Getty Images

 3月のアリゾナはすでに暑い。気温はすでに摂氏30度近くに達している。日差しが強く、長時間にわたって眼を開けているのが苦痛なくらいだ。

 スプリング・トレーニング中のある日、スコッツデールにあるダイヤモンドバックスとロッキーズの合同施設「ソルトリバー・フィールド」を訪れると、静かに練習に打ち込む選手たちの姿があった。ダイヤモンドバックス傘下のマイナーリーガーたちだ。

 本来、マイナーの選手たちは午後から練習するのだが、その日はメジャーのオープン戦が夜に行われるということで順番が入れ替わっていた。腰のリハビリ中だという日本人選手を待っている時間に練習を眺めていたのだが、指導者たちからの声がほとんど聞こえてこない静かな空気の中で、選手たちは自己研鑽に励んでいた。

 日本とまったく違う練習風景。この環境からスーパースターが誕生するのかと思いながら見守っていると、スマートフォンが鳴った。「そろそろ、吉川の取材O Kです」。通訳からの連絡だった。

 およそ1年ぶりに会ったその男は、依然と変わらぬ飄々とした姿で取材場所に現れた。
 吉川峻平が世間を騒がせたのは2018年の秋前のことだ。

 関西大を経て社会人野球の強豪・パナソニックで活躍し、多くのスカウトがドラフト上位候補と評価していた右腕は、あるスポーツ紙の報道によりダイヤモンドバックスと契約を交わしていたことが判明。一気に大問題へと発展した。

 社会人野球所属の選手がメジャー球団と契約すること自体はルール違反ではない。問題は、社会人野球所属選手でありながらメジャー球団と契約をしてしまったことだった。しかも吉川は、ダイヤモンドバックスと契約を交わした後にもパナソニックの試合にも出場していた。

この問題が明るみに出ると、吉川は悪者になった。そして、ルール違反の批判に乗じて、たくさんの罵声が浴びせられた。

「球が遅くて通用するはずがない」「技術がないのにメジャーに行ってどうするんだ」

日本の球界を経ずに直接、海を渡るアマチュア選手が必ず通る道なのかもしれない。

「僕の場合どうなんですかね。アメリカに行くことで批判している人ってどれくらいいるんでしょうか。どっちかっていうと、ルールを破ったことの方が多いような気がします。それに関しては本当に勉強不足で、いろんな人に迷惑をかけてしまって申し訳ないと思っています。その思いはこれからもなくならないです。それ以外の批判については、僕は人によく見られたくてこっちに来たわけではないので、気にはしていないです」

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