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プロ野球

【12球団“縁の下の力持ち”:ロッテ】“愛すべきエム”、江村直也は笑顔と感謝が持ち味のムードメーカー!

岩国誠

2020.06.05

その振る舞いからチームに不可欠な盛り上げ役となっている江村。今年も彼の笑顔が見たい!写真●滝川敏之

その振る舞いからチームに不可欠な盛り上げ役となっている江村。今年も彼の笑顔が見たい!写真●滝川敏之

 チームを支えるのは何もスター選手だけではない。絶対的なレギュラーでなくとも、率先してベンチを盛り上げたり、どんな役割もこなす選手もまた、必要不可欠な存在である。19日から開幕するプロ野球。異例のシーズンだからこそ、各チームの幹となる「縁の下の力持ち」にスポットライトを当てていきたい!

    ◆     ◆     ◆ 

 プロ野球の開幕延期が決まり、球音が途絶えていた今年の4月。あるテレビドラマがインターネット上を賑わしていた。

『M 愛すべき人がいて』――歌手・浜崎あゆみへの取材をもとに書かれた小説をドラマ化した作品が、あまりに特異な作風で反響を呼んでいたのだ。

 実はロッテにも、愛すべき『エム』がいる。江村直也。強肩を武器に大阪桐蔭高校から2010年ドラフト5位で入団し、今年10年目を迎える中堅キャッチャーだ。

 江村はいつまでも少年のような人懐っこい笑顔のせいか、チーム内では「いじられ役(益田直也)」「盛り上げ役(清田育宏)」と、ムードメーカー的な役割を担い、また試合前円陣の「声出し要員(角中勝也)」とも、冷やかされる。ロッテのファン感謝デー『スーパーマリンフェスタ2018』では、司会やキスまで数々のパフォーマンスで盛り上げてMVPを獲得するなど、“お祭り男”として確固たる地位を築き上げている彼のニックネームが、まさに『エム』なのだ。

 陽気なキャラクターばかりがクローズアップされることの多い一方、野球に対してはとても実直な男だ。グラウンドに入る際、必ず帽子を取って深々と頭を下げ、「今日一日、よろしくお願いします。今日も勝ちますように」と、チームの勝利を願ってから練習に入る。オフには、炭谷銀仁朗(巨人)の自主トレに参加し、さまざまな捕手スキルを学ぼうと精進している。

 昨年の春、江村はこんなことを語ってくれた。
「キャッチャーとしてレギュラーを目指さないと、やっている意味はない。上を目指さないと、この先はないと思っています。まずは田村(龍弘)っていう人間に勝たないといけないので、そこに勝つことを目指してやって行かないといけない」
 
 5年連続100試合以上でマスクをかぶり、ベストナインにも選ばれたことがある田村を乗り越えるには、バッティングが大きな課題だ。通算7年、285打席で打率.155と厳しい数字が並んでいる。しかし昨年6月2日の西武戦、満塁の場面でプロ初ホーマーを放ってみせた。井口監督も「まさか打つとは」との驚きの一発だったが、江村が昨年、常々口にしていた「しっかり振ること」の意識が実を結んだ瞬間だったように思う。

 もっとも、“まさか”ではなかったのは、初本塁打の後にチームメイトからサイレント・トリートメントで祝福されたことだろうか。ともあれ、何とも“お祭り男”らしい一発だったわけだが、江村は浮かれることなくこう答えた。

「捕手としては、先発に勝ちがついたことが嬉しい。守れないと試合に出られないので、守りでチームに貢献できるようにしたい。チームが勝つことが一番です」

 それから一年、今年の6月2日、ファームでのDeNA戦に出場した江村は、またも満塁ホームランを放った。やはりこの男、何か持っている。翌日には一軍に昇格し、正捕手を目指してアピールを続けている。今季のロッテには田村を筆頭に、昨年頭角を現した育成出身の柿沼友哉、同じく正捕手争いをしてきた吉田裕太、ベテランの細川亨に、走攻守三拍子揃うドラフト2位ルーキー・佐藤都志也も加わり、いつにない競争が生まれている。

 いずれも個性派揃いだが、我らの「愛すべき”エム”」も存在感は負けていない。ドラマの強烈なキャラクターたちのように、野球でもアピールして、自らも愛する『“M”arines』に、大きな喜びをもたらすことを期待したい。

取材・文●岩国誠

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