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プロ野球

「FA登録日数」と「出来高」はどうなる?コロナ禍で浮き彫りになったプロ野球の“構造的問題“

中島大輔

2020.06.08

各球団の足並みが揃わないのも、NPBという組織に構造的問題があるからだ。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

各球団の足並みが揃わないのも、NPBという組織に構造的問題があるからだ。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 新型コロナウイルスの感染拡大で3ヵ月遅れたプロ野球の開幕が、いよいよ迫ってきた。多くのファンが球音を待ちわびる中、6月1日、日本野球機構(NPB)と事務折衝を行なった日本プロ野球選手会の森忠仁事務局長が、見過ごせない発言をしている。

 フリーエージェント(FA)制度に関する出場登録日数の規定や、試合数が143から120に減ることによる出来高契約への影響など、選手会と機構の主張に大きな差があり、「選手の反応次第では、(開幕の延期要望も)否定できない」というのだ(同日の『朝日新聞DIGITAL』より)。

「選手会はガッカリさせるようなこと言うなよ」
「お金に関しては選手会側の譲歩は必要」

 上記のように選手会に対して批判的なファンの声を、ポータルサイトのコメント欄で多く目にした。前代未聞の厄災によって社会全体が深刻なダメージを受ける中、楽しみにしている開幕の延期を否定できないという選手会の姿勢に落胆するのは理解できる。

 労使交渉が行われているのはメジャーリーグでも同じで、こちらは今季実施する試合数とそれに応じた年俸の削減幅で機構側と選手会の主張が折り合わず、シーズン開幕に見通しが立っていない状況だ。感染リスクがある中、どうにか年俸の70%を確保したい選手会に対し、オーナー側は試合を開催すればするほど赤字になると主張。50試合という超短縮シーズンひいては今季のシーズン中止もチラつかせるような姿勢で、「ビリオネア(億万長者/オーナー側)対ミリオネア(百万長者/選手側)の喧嘩」と呆れる声もある。

 
 ただし、経営者であるオーナーと個人事業主の選手が要求をぶつけ合うのは、双方が契約を交わして行われるビジネスでは至極当然のことだ。逆に思うのは、日本では6月19日の“開幕内定”が1ヵ月以上前から各球団に伝えられたと言われる中で、選手会と機構側の事務折衝はなぜ、6月1日まで行われなかったのだろうか。

「選手会と話すところまで、球団側の話がまとまっていないという理由でした」

 森事務局長に電話取材すると、そう答えが返ってきた。選手会は4月から事務折衝の要望書を複数回提出してきたが、なかなか応じてもらえなかったという。

「本来なら、開幕を発表する前に選手からもいろんな話を聞いて、選手も『OK』という状態でスケジュールを発表するのが望ましい。いろんなものが選手を軽視と言いますか。球団に対してかなり怒っている選手もいます」

 球団主導で開幕日や当面のスケジュールが決められて以降、選手会の要望で6月1日に1月以来の事務折衝が持たれ、日程短縮による今季の特例について初めて話し合われた。そこでは両者が折り合わず、選手会の臨時大会が行われる翌日の同月16日、機構側と2回目の事務折衝が持たれる予定だ(選手会は8日の週にも話し合いを持ちたいと要望する予定)。

 年俸削減で揉めているMLBと異なり、NPBでは日本プロフェッショナル野球協約の中に不測の事態による年俸削減の規定がなく、協議されていない。球団から減額を言ってこない以上、選手会から申し出ることではないというスタンスである。
 
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