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プロ野球

「都立の星」から「オリの救世主」へ。プロ初勝利の鈴木優がプエルトリコの武者修行で掴んだもの

中島大輔

2020.07.02

7連敗中のオリックスを救ったのは、“プロ0勝”の都立高出身・鈴木のピッチングだった。写真:産経新聞社

7連敗中のオリックスを救ったのは、“プロ0勝”の都立高出身・鈴木のピッチングだった。写真:産経新聞社

「西武打線を抑えることができたら、シーズン15勝できますよ」

 7月1日の西武戦で今季初先発したオリックスの鈴木優が冗談半分でそう話していたのは、7ヵ月前のことだった。

「都立の星」と期待されて雪谷高校からプロ入りし、5年目のシーズンを終えた2019年の冬。鈴木はカリブ海のアメリカ領プエルトリコに渡り、メジャーリーガーも参戦するウインター・リーグで腕を磨いた。

「最高の環境でやれているし、収穫しかないです」

 カリブ海を照らす太陽のように晴れやかな表情でそう語った右腕にとって、プロ入り2度目の先発のチャンスは思わぬ形で巡ってきた。エースの山岡泰輔が6月26日のロッテ戦で脇腹を痛めて登録抹消。ちょうど一軍昇格した同日にスクランブル登板となった鈴木が3回2失点と試合をつくると、5日後、メットライフドームでの西武戦でプロ入り2度目の先発のチャンスが回ってきたのだ。

「僕の課題は初回の入り方です」。そう自覚する鈴木は、“山賊打線”に対して最高の立ち上がりを見せた。自分流の真っ向勝負で三者凡退に仕留めたのである。

 プエルトリコで鈴木に持ち味を気づかせてくれたのが、昨季までメジャーに7シーズン在籍した捕手のホアン・センテーニョ(今季はレッドソックスとマイナー契約)だった。
「お前の真っすぐはいいボールだけど、真っすぐを攻撃的に使うリードの方がピッチャーとして生きるな」

 センテーニョの言葉で「自分は変化球あってのピッチャー」と再認識した鈴木は、この日の西武戦でまさにそんなピッチングを披露した。ツーシーム、フォーク、スライダー、カーブをうまく使いながら、フォーシームを生かす組み立てで強力西武打線に堂々と立ち向かったのだ。とりわけ効果的だったのが、同じような軌道で落ちる140キロ前後のツーシームと130キロ台前半のフォークだった。この二つの球種とフォーシームでピッチトンネルを構成しながら、120キロ台のカーブを有効に使っていく。
 
 初回から攻撃的な投球で三者凡退。2回には先頭打者の山川穂高をカーブで空振り三振に仕留めると、続く外崎修汰には内角への145キロの速球で見逃し三振を奪った。7連敗中のオリックスは、“山賊打線”に一歩も怯まない鈴木のピッチングに勇気づけられたはずだ。

 鈴木は3回まで打者11人中9人に初球をストライクで入るなど有利なカウントをつくり、積極性が持ち味の西武打線を封じ込めていく。5回までノーヒッターの快投を見せると、味方が6回表に吉田正尚の2ランなどで一挙6得点。鈴木は右手をつったために5回で降板したものの、後を受けたリリーフ陣が完封リレーでつないで逃げ切った。今季初先発の鈴木は5回までに73球を投げて被安打0、与四球2、奪三振7という完璧な投球内容でプロ初勝利を挙げたのだった。

 試合後に呼ばれたヒーローインタビューでは、「プエルトリコに行ったところから野球を楽しむことに取り組んでいます。今日も楽しく投げられました。やっと1勝できたので、ここからもっともっと頑張っていきます」と笑顔で話した。

 鈴木の快投に引っ張られ、オリックスは連敗を7でストップ。プエルトリコで英語を積極的に使ってコミュニケーションを図り、多くを吸収して帰ってきた右腕が、巻き返しを図るチームに本当に大きな1勝をもたらせた。

取材・文●中島大輔
 

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