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MLB

【プエルトリコ野球“復権”の理由:前編】名捕手を輩出する「豊かな土壌」

中島大輔

2020.07.29

数多くの名捕手を輩出するプエルトリコ。その秘密は独自の育成法にある。(写真)龍フェルケル

数多くの名捕手を輩出するプエルトリコ。その秘密は独自の育成法にある。(写真)龍フェルケル

 数多くの名選手を輩出しながら、一時は危機に瀕していたプエルトリコ野球。しかし、2013年、17年のWBCで2回連続準優勝を果たすなど、近年は再び勢いを取り戻している。そこには一体どんな要因があるのか? 中南米野球取材をライフワークとする気鋭のライターが“復権”の理由を探る。

■米国だが米国にあらず。独自の性質を持つ野球文化

 2019年冬、次の所属球団を探すフリー・エージェントのベテランや中堅選手、飛躍のきっかけを模索する若手選手がカリブ海に浮かぶ常夏の島に集まっていた。

 冬でも気温30度を超えるアメリカ自治領プエルトリコで11月から翌年1月に開催されるウインターリーグには、母国はもちろん、アメリカ本土からも大勢の選手が自身の存在をアピールしようとやってくる。

「気候に恵まれているし、ウインターリーグは非常にいい環境だと思う。若いプロスペクトたちが、経験のある選手と一緒にプレーできるからね」

 首都サンフアンのエスタディオ・ヒラム・ビソーンでそう話したのは、ダイヤモンドバックスでスカウトを務めて10年になるアメリカ人のブレット・ウェストだ。プエルトリコのプロリーグであり、同時に選手たちのショーケースでもあるウインターリーグでは、彼のようなMLBのスカウトたちが目を光らせている。
 
 プエルトリコはアメリカの自治領で、島民は米国籍を有する一方、地理的にはカリブ海に位置するという不思議な島だ。北西に位置するキューバ、真西のドミニカ共和国ではまさにラテンならではの雰囲気が漂う一方、プエルトリコの街並みは観光地を除けばアメリカ本土に近い。通貨はドルで、公用語はスペイン語。経済的に恵まれた北部の人々は流暢な英語を話すのに対し、340万人の島民のうち80%が英語は「決して得意ではない」という(アメリカ合衆国国勢調査局15 年データ)。

 そんなプエルトリコを含めた中南米選手の存在感はMLBで増すばかりだ。MLBでプレーするラティーノの数が初めてアフリカン・アメリカンを上回ったのは1993年。17年にMLBでプレーした選手の割合をエスニック集団別で見ると、アフリカン・アメリカンの6.7%に対してラティーノは27.4%と大きく上回っている。

 ただし、同じ東アジアでも日本と中国、韓国でさまざまな相違点があるように、ラティーノにも国籍ごとに異なる特徴を見て取れる。底抜けに明るい性格という共通点を持ちながら、それぞれのバックボーンがプレースタイルに影響を与えているのだ。そうした地政学的な背景に興味を抱き、中南米野球の取材を続けてきた筆者と写真家の龍フェルケルは昨年冬、5ヵ国目としてプエルトリコを訪れた。
 

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