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MLB

クラスター発生を招いたMLBの「甘さ」。カーディナルスは45日間で55試合の強行日程も

豊浦彰太郞

2020.08.14

カーディナルス(左)とマーリンズ(右)の2球団でクラスターが発生。しかし、初動を見誤らなければこの事態を防げたかもしれない。(C)Getty Images

カーディナルス(左)とマーリンズ(右)の2球団でクラスターが発生。しかし、初動を見誤らなければこの事態を防げたかもしれない。(C)Getty Images

 新型コロナウイルスの感染拡大に悩むMLBは、今季プレーオフのフォーマットとして「バブル式」を検討しているという。これは、現在の開催形式の失敗の証でもあるだろう。

 “bubble ”とは、シャボン玉(bubble)の中に隔離したような状態での運営のことで、NBAやNHLがすでに採用している。NBAは広大な一施設内に全球団を集め、NHLは東西2都市に集約させる形だ。どちらも選手の移動は基本的にバスが使われており、MLBが検討しているのはNHLタイプだという。

 背景には、開幕2週間にしてマイアミ・マーリンズとセントルイス・カーディナルスで集団感染が発生したことがある。カーディナルスに至っては、今季5試合目の7月29日を最後に試合を行っていない。したがって、公式戦最終日の9月27日までに全60試合を消化するには、残45日間で55試合という不可能に近いスケジュールをこなさなければならない。

 MLBは、60試合を消化できない球団が出ても「勝率で順位を決定するので問題はない」としているが、登録選手が集団感染で大量に欠場した場合、果たして公平な競争と言えるのか? という疑問は残る。仮に集団感染の発生が人気球団のヤンキースやドジャースであっても、MLBは「致し方なし」とのスタンスを取れただろうか。
 
 2球団での集団感染発生の理由として、選手の遠征先での夜遊びが取り沙汰されている。MLBは開幕前にまとめた感染防止のための特別ルール集「プロトコル」を遵守しない選手に、その責任を押し付けようとした。そして、コンプライアンス・オフィサーの任命を各球団に求めた。

 違反者を厳しく罰することは可能だが、野球選手に限らず、人に長年の習慣を変えさせるのは並大抵のことではない。そのあたりの『人の性』を、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは理解していただろうか。

 11日には、クリーブランド・インディアンスの2投手が遠征先で外出したことで出場制限リストに入れられた。しかし、試合中でも禁止されているハイファイブ(ハイタッチというのは和製英語だ)を完全にやめさせることができないのに、誰も見ていない(はず?)の夜遊びを、エネルギーもカネもあり余っている若者にやめさせることは不可能だ。これから先も、集団感染発生の可能性は否定できないだろう。

 ということは、絵に描いた餅の規定に頼り、都市から都市へ移動を繰り返すこの運営形式のザルぶりを看過したことに問題があったと言える。

 実は、MLBも開幕前はNHL式のような「バブル」を検討していた。採用されなかった理由は多々あるが、突き詰めれば今季中に有観客開催に移行する希望を捨てきれなかったからではないか。ビジネス面の穴を最小限にとどめようとした思惑を感じざるを得ない。しかし、その代償として抱え込まなければならなかったリスクは予想以上に大きかった。後はこれ以上、感染者が出ず“無事”にシーズンを全うすることを祈るのみだ。

文●豊浦彰太郞

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