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メジャー最高の右翼手ベッツがセカンドへ?ドジャースのプレーオフへ向けた秘策とは

宇根夏樹

2020.09.17

右翼でゴールドグラブ4度のベッツが10日の試合で守ったのはセカンドだった。(C)Getty Images

右翼でゴールドグラブ4度のベッツが10日の試合で守ったのはセカンドだった。(C)Getty Images

 9月10日のダイヤモンドバックス対ドジャース戦で、奇妙な光景が見られた。ムーキー・ベッツ(ドジャース)が、これまでのキャリアの大半で守ってきた定位置のライトではなく、二塁でスタメン出場したのだ。

 ベッツが二塁を守るのは、2018年8月3日以来のこと。先発出場に限れば、メジャー1年目の14年以来、実に6年ぶりだ。昨オフにレッドソックスからドジャースへ移籍後は、どの試合でもライトとしてスターティング・ラインナップに名を連ねていた。ライト以外のポジションを守ったのも、7月31日の一度だけ。この日もいつも通りに当初はライトで出場し、7回にセンターを2イニング守っただけだった。

 ドジャースの野手陣に故障者が続出していたための、苦肉の策というわけではない。この日の時点で離脱していたのは、三塁手のジャスティン・ターナーだけだった。にもかかわらず、ライトで4年連続ゴールドグラブを受賞したベッツが二塁を守ったのは、ポストシーズンに向けた準備に他ならない。

 今シーズン、ドジャースは両リーグ一番乗りで30勝に到達した。9月12日時点の勝率も、両リーグで最も高い。同地区のパドレスによる追い上げもあり、地区8連覇は確定していないものの、ポストシーズン進出を逃すことはほとんどあり得ない。

 ただ、今のドジャースには有力な二塁のレギュラーがおらず、ウィークポイントになっている。守備はともかく、打撃がイマイチな選手が多いのだ。開幕当初はエンリケ・ヘルナンデスが守っていたが、ほどなく日替わりに。8月の終わり頃から、16年のドラフト全体20位指名の有望株ギャビン・ラックスが抜擢されたが、打率1割台と期待に応えられなかった。
 
 だが、ドジャースの層の厚さを考えると、セカンドを固定することにそこまでこだわる必要もない。もともと、ドジャースにはクリス・テイラーやマックス・マンシーら、複数ポジションをこなせるレギュラー選手が少なくない。

 そこにベッツが加わることによって、ラインナップはさらに柔軟性を増す。短期決戦であるポストシーズンの各シリーズにおいて、これはむしろ強みになるはずだ。不動のレギュラーが故障や不振に見舞われた場合、その穴を埋めるのは難しい。だが、他のレギュラーのポジションを動かすことができれば、ダメージを最小限にとどめることができる。

 実は、ベッツはプロ入り当初は二塁手だった。もし、ダスティン・ペドロイアやがいなければ、レッドソックスで二塁手としてキャリアを築いていた可能性も十分あった。

 今回の二塁出場は、数週間前にベッツ自身がデーブ・ロバーツ監督に提案したようだ。ロバーツ監督は「あらゆることを検討する。特にベッツのような選手がそれに対して前向きに考えてくれるとなれば」とコメントしている。

 ドジャースは13年から7年連続で地区優勝しながら、1988年以来のワールドチャンピオンはいまだに果たせていない。今年2月にトレードで獲得したベッツは、言うなれば「世界一へのラストピース」。ドジャースの期待通り、ここまではその役割を存分に果たしてくれている。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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