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MLB

「俺がユウを苦しませた」緩慢守備で途中交代した大砲がサイ・ヤング賞争いを演じるダルビッシュに謝罪

SLUGGER編集部

2020.09.21

6.0回4失点で痛恨の“炎上”をしたダルビッシュ(右)。その一つにはシュワーバー(左)のひどい守備があった。(C)Getty Images

6.0回4失点で痛恨の“炎上”をしたダルビッシュ(右)。その一つにはシュワーバー(左)のひどい守備があった。(C)Getty Images

 メジャーリーグはシーズン最終盤に差し掛かり、タイトルや賞レース争いが激化している。中でも、日本でも注目されているのがナ・リーグのサイ・ヤング賞争いだ。ダルビッシュ有(シカゴ・カブス)が8月中盤から賞レースのトップに立っているとの評価が現地メディアの一致するところであり、アジア人初の快挙へと期待がかかっている。

 しかし、9月9日のシンシナティ・レッズ戦で7連勝がストップすると、前回15日の登板では守護神が9回につかまって2試合続けて白星を逃す。するとその間に、9日に投げ負けたトレバー・バウアーやジェイコブ・デグロム(シンシナティ・レッズ)、ディネルソン・ラメット(サンディエゴ・パドレス)らが調子を上げ、“停滞”しているダルビッシュに迫っていた。

 1点を失うことすら致命傷となりかねない中で迎えた、20日のミネソタ・ツインズ戦。ダルビッシュは初回、先頭打者にヒットを許すと、四球とタイムリーで1死も取れずに1点を先制されてしまう。1死満塁のピンチは二者連続三振でしのいだものの、本調子でないのは明らかだった。どうにかエースを盛り立てたい野手陣だったが、まさか逆に足を引っ張ってしまう。

 2回、先頭のジェイク・ケイブが打った打球はレフトを守るカイル・シュワーバーの頭上を襲った。ケイブは足が速い選手ではなく、二塁打に終わるかと思いきや、シュワーバーがのっそりとした動きで打球を追い、さらにクッション処理も見誤ってしまい、三塁まで進まれてしまうのだ。

 それでも右腕は次の打者を三振に仕留めるものの、1番の内野ゴロの間に三塁走者がホームに還って2点目を失った。シュワーバーの緩慢守備がなければ、この時が2死三塁だった可能性が高く、のちの結果は変わったかもしれない。これにはSNSでも日米問わず、「シュワーバーは何をしているんだ」「ひどい守備」と批判の声が多く届いた。
  
 すると3回表、デビッド・ロス監督はシュワーバーに守備交代を出す半ば懲罰交代のような措置を取り、テレビ中継でも何度も彼の姿が抜かれた。果たして試合後、早々の交代の理由について訊かれたシュワーバーはこう答えたのだった。

「打者を三塁に進めてはいけなかった。俺の守備のせいで、ユウを苦しませてしまった。そして、チームを苦しい状況にしてしまった」と、ダルビッシュとチームに謝罪。ロス監督は懲罰自体には言及しなかったが、対話を通して交代したほうがいいと判断したと語っている。

 確かにシュワーバーの守備がちゃんとしていたら、ダルビッシュは1失点にとどめることができ、僅差の展開となれば相手投手陣にもプレッシャーを与えられていたかもしれない。7回に痛恨の2ランを許したダルビッシュも、その時は球数を減らして被弾がなかったかもしれない。すべては「タラレバ」になってしまうが、この試合の「記録」として残るのは、ダルビッシュが三塁打を許し、失点したという事実である。起こった過去のことは取り戻せない以上、昨季38本塁打を放った左の大砲は、そのバットで停滞が続く打線をサポートしなければならない。

 この試合を6.0回4失点9奪三振で終えてダルビッシュは、今季成績が11先発で7勝3敗、防御率2.22、83奪三振となった。勝利はリーグ1位タイ、奪三振は2位タイとまだまだ賞レースを争っているが、防御率は前回登板から約0.40も悪化して7位まで後退した。この失点が“致命傷”にならないために、またシュワーバーを“救う”意味でも、ダルビッシュには次の最終登板で素晴らしいピッチングを披露してもらいたい。

構成●SLUGGER編集部
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