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プロ野球

広島新助っ人クロンは本当に「メジャー長期契約を蹴った」のか? 事実誤認の可能性を考える

THE DIGEST編集部

2021.01.20

広島新外国人選手のクロンに関する報道で、どうにもおかしいものがあった。果たしてその実態は…。(C)Getty Images

広島新外国人選手のクロンに関する報道で、どうにもおかしいものがあった。果たしてその実態は…。(C)Getty Images

 プロ野球のキャンプ開始がいよいよ2月1日に迫り、『球春到来』を感じさせている。しかし一方で、新型コロナウイルスはいまだに全世界中で猛威を振るっており、”例年通り”というわけではない。プロ野球も例外ではなく、多くの球団で助っ人外国人選手の来日が遅れるなど対応に追われている形だ。

 そんな中で気になるニュースが飛び込んできた。広島が昨オフに獲得した新外国人選手、ケビン・クロンに関する報道だ。1月3日とかなり早い段階で来日となった右打ちの外野手は、2週間の自宅待機を経て来日会見を行った。すると、某web媒体はクロンに関する記事でこのような見出しを付けていた。

「新加入クロンはメジャー長期契約を捨て来日~」

 タイトルだけでなく、本文内でも「ダイヤモンドバックスでの長期契約を捨て、NPB球団が獲得に乗り出す中で広島を選択」と綴られている。メジャーリーグに関する情報を追っているファンの方でも、この記事を見て「ん?」と思ったのではないだろうか。というのも、クロンがダイヤモンドバックスから長期契約を提示されるような”格”のある選手ではなかったからだ。
 
 クロンは2019年シーズン、3Aで38本塁打を放ってタイトル獲得、OPS1.226と出色のパワーを発揮してきた。しかし、この時は26歳と若手というタグが外れた段階にあり、またメジャーでも通算2年で47試合に出場し、打率.170、6本塁打、OPS.665と結果を残せていなかった。また、守備もほぼファースト、しかも好守という評価でもない。

 メジャーリーグでは、いくつかの媒体が有望株のランキングトップ100を発表している。この中に入った選手は将来の活躍が期待され、またトレードの駒としても価値が見いだされることも少なくない。仮にメジャーでの実績が乏しくても、この中でトップクラスの選手であれば、確かに長期契約を提示されることもある。

 直近では、エロイ・ヒメネスが6年4300万ドル、ルイス・ロバートが6年5000万ドル、エバン・ホワイトが6年2400万ドルという大型契約を、メジャーデビュー前に手にした。ちなみに、MLB.comの発表したプロスペクト・ランキングで、ヒメネスとロバートが全体3位、ホワイトは56位に入ったのが最高位だ。そしてクロンは、主要4媒体のランキングでトップ100に入ったことはない。

 もちろん、このランキングに入っていないからオファーがないかと言えばゼロではない。しかし、現地媒体を検索しても、ダイヤモンドバックスがクロンと長期契約しようとしている記事は見当たらないのだ。

 おそらく、この記事を掲載した媒体は、同球団が彼を「保有できる期間=長期契約」と解釈して、このような記事を作成したと思われる。これが可能な限り考え得る分かりやすい”事実誤認”だが、いやいや現地メディアも報じていないアメリカ人選手の契約を日本の媒体が先につかんでいる可能性も、もちろんなくはないが……。

 ただ、この解釈を適用してしまうと、例えば日本プロ野球でも国内FA権を最短で取得する7年間は、全員が「長期契約をしている」というものになり、破綻した論理になってしまう。クロンの実力云々は今季明らかになるところだが、この報道には違和感を覚えずにはいられなかった。

構成●THE DIGEST編集部
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