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MLB史上最大のスキャンダル――100年前に全米を震撼させた「ブラックソックス事件」とは?【ダークサイドMLB】

出野哲也

2020.02.04

チーム三冠王のジョー・ジャクソン(右)を含む8人が、球界から永久追放された。(C)Getty Images

チーム三冠王のジョー・ジャクソン(右)を含む8人が、球界から永久追放された。(C)Getty Images

 光が当たる場所には必ず影がある。MLBでも、これまで数多くのスキャンダルや事件が世間を騒がせてきた。本欄で紹介される人物のほとんどは、子どものお手本になるような存在ではない。しかし、彼らもまたMLBの歴史の一部であることは、誰にも否定できないのだ。今回はブラックソックス事件について紹介する。

■第1戦開始直後の死球が八百長加担の合図だった

 名作映画『フィールド・オブ・ドリームス』の世界が現実になる。MLBは今年8月13日、映画の舞台となったアイオワ州ダイアーズビルに新しくグラウンドを作り、ヤンキース対ホワイトソックスの公式戦を行うと発表した。『フィールド・オブ・ドリームス』の公開は1989年。30周年の節目となる昨年に開催にすれば良かったのではとも思うが、2020年もこの映画の重要なテーマであるブラックソックス事件の発覚から、ちょうど100年に当たる。

 ブラックソックス事件とは、1919年のワールドシリーズ(レッズ対ホワイトソックス)を舞台に行われた八百長行為と、それが原因でホワイトソックスの8選手が球界から永久追放処分を下された大騒動のことである。8月の試合がホワイトソックス戦なのもそれが理由だ(対戦相手がレッズであったら設定としては完璧だったが)。さまざまな面でメジャーリーグを激変させたアメリカ野球史上最大のスキャンダルは、1世紀を経た今も、その影響を随所に残している。
 
 創設当初、ホワイトソックスはア・リーグ屈指の強豪だった。リーグ結成初年度の王者であり、06年のワールドシリーズではカブスとのシカゴ対決を制して世界一に。15年に強打者ジョー・ジャクソン、殿堂入りの名二塁手エディー・コリンズらが加わって17年はリーグ優勝、翌18年はジャクソンらが第一次世界大戦で兵役に取られ6位に沈んだが、19年は29勝を挙げたエディ・シコットらの活躍でペナントを奪い返した。

 だが、レッズとのワールドシリーズに臨む前から不穏な空気が流れていた。シリーズの勝敗を賭けの対象にするブックメーカーのオッズが怪しい動きを示していたのである。普通に考えれば戦力の充実しているホワイトソックスが有利と見なされるはずが、レッズの倍率が日に日に下がり、ついにはホワイトソックスと入れ替わる。これはギャンブラーたちがホワイトソックスに〝協力〞を要請した結果だと、巷ではもっぱらの噂だった。

 そして、それは噂ではなく真実だった。ニューヨーク裏社会の大立者であるアーノルド・ロススタインは、ホワイトソックスのチック・ギャンディルを通じて敗退行為に協力する選手を集めさせた。シコットと、23勝を挙げていたレフティ・ウィリアムズの両エースがわったことで計画は容易になる。さらにチーム三冠王のジャクソン、2番目の得点源だったハッピー・フェルシュ、内野守備の要である正遊撃手のスウィード・リスバーグ、控え内野手のフレッド・マクマリンも参加。ギャンディルと併せて〝実行犯〞は7名になった。第1戦、先発のシコットが2球目をレッズの先頭打者にぶつける。ギャンブラーたちへ協力すると知らせる合図だった。
 

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